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■□■杏林大学医学図書館ニュース■□■ 第102号 2020.10.01配信

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□Contents□

■ご挨拶■ 
■図書館からのお知らせ■ 
■お勧め図書■ 
■図書館長のご一考願い■ 
■ドクターのひとりごと■ 
■編集後記■ 

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■ご挨拶■

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秋分の日が過ぎてからめっきり秋らしくなりました。18時の閉館作業をしていると窓の向
こうが暗く、虫の声が聞こえてきます。猛暑に残暑と言われても、まだまだ日本は四季が
感じられますね。
さて、今回のメルマガは「考えるネタ」をご提供。館長の問いかけやドクターの青春時代
にあなたは何を思うでしょうか。秋の夜長にぜひどうぞ。


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■図書館からのお知らせ■

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・【11月3日】停電によるWebサービス停止が予定されています

毎年秋には法令電気点検日がありますが、今年は11月3日に実施されます。当日は蔵書検
索やリモートアクセスなどすべてのWebサービスが停止となる予定です。
詳細は改めてホームページなどでお知らせいたします。


・井の頭図書館の資料を予約する前に、医学図書館の所蔵もご確認ください

井の頭から資料を取り寄せる方の中に、実は同じものがこちらの書架にあるのに・・とい
うパターンが散見されます。
医学図書館をメインで使う方は「医学図書館の書架にある資料」の予約ができませんが、
井の頭からの到着よりも早く手に取れることも多いので、必ず配置場所と状態をご確認く
ださい。

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■お勧め図書■

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『Q&Aですらすらわかる体内時計健康法 : 時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く
健康 / 田原優, 柴田重信著. -- 杏林書院, 2017. 』


「運動は朝と夜どちらが効果的?」「カフェインは肥満に効く?」という疑問を持ったこ
とがきっかけで発見した図書をご紹介します。
「体内時計研究(サーカディアン・リズム)」には2017年ノーベル医学・生理学賞が贈ら
れていて、病気じゃなくてもそれを整えることで健康をキープできるのか?と元々興味が
ありました。
本書は40件のQuestionとそれに対する簡潔なAnswer、詳細な解説と根拠となる文献が掲載
されていて、すべて4ページにまとめられているので、目次を見て気になるところから読
み進められます。
冒頭の疑問の答えが気になる方は、ぜひお手に取ってみてください。

「家族で自粛太り」をしたことで危機感を持ったのか、夫はこの3か月あまり欠かさず運
動をしています。朝晩のウォーキング&ランニング、某N社リング状コントローラーでの
フィットネスゲームを続け、高たんぱく低脂肪を意識した食事やおやつに無塩のナッツ類
を選ぶ徹底ぶりです。バランスの良い食事を用意する以外にも何か知識で協力したくなる
よね・・・と思ったのですが、図書から答えを得る前に14キロ近く減量していました。大
学時代の体重再来だそうです。痩せたことより、30年近くかけてそんなにため込んでいた
ことにびっくりですよ。(さ)


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■図書館長のご一考願い■ ビジュアル化やコンパクト化が理解への近道か?

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8月半ばにオンラインと対面とのハイブリッドで学会があり、ささやかながら書籍が展示
されていた。春先の学会が軒並み中止になったので、そこでのお披露目を考えていた本の
関係者は出鼻をくじかれて気の毒だと思うが、コロナ騒動の中でも予定された書籍は次々
と刊行されている。コロナで緊急事態宣言が出たときは、図書館も書店も閉じていたのだ
が、本の制作は止まっていたわけでないことを再認識し、どんな本がでているのか、久し
ぶりに大きめの書店へ向かった。

コロナや感染症関係の本が平積みになっていたが、基礎医学の棚をみると、新しい薬理の
教科書が何冊か出ているのに気づいた。手にとってみると、現在講義で使っている教科書
より薄い。さらに、たいていの新しい教科書は、ビジュアルであることとわかりやすさと
をセールスポイントにしているようだった。そういえば、10年以上前日本に帰国して久し
ぶりに日本の医学書をみたとき、欧米の定番教科書に比べて図が多く、記述が少ないとい
う印象をもったことを思い出した。そう、ビジュアルにわかりやすく、は10年以上のトレ
ンドだったのだ。

百聞は一見にしかずというように、よいビジュアル素材は理解を容易にするが、本当にわ
かるということは、自ら文章化できることではないかと考えている立場からは、記述の少
ないことに不安と違和感を覚えた。学生にすれば、重要ポイントを箇条書きにして、量を
少なく暗記しやすくするのが“コスパ”のいい勉強だと思っているのかもしれないが、箇
条書きの背後にある理屈、根拠を理解しないことにはその科目をマスターしたとはいえな
いだろう。そのためには丁寧な説明が必要で、一定量の記述がないほうがおかしい。多く
のその路線の教科書で、“ビジュアル”は達成できても、記述をコンパクトにしすぎて、
“わかりやすく”からは逆に遠ざかっているのではないかというのが、違和感であった。
そういえば、試験で、設問の答えの文章になっておらず、キーワードを羅列したような答
案をみることがあり、文章にするまでの理解ができていないと感じることがあり、医学生
も“ビジュアルにわかりやすいトレンド”に毒されているのかもしれない。

机上の空論というように、本だけ読んでいればいいというわけではないが、本を読めない
というのは医学のみならず広く文化の継承という観点から大問題である。そういうことを
言うと、読解力養成のため、入試科目に国語をいれればいいのではという議論がある。し
かし、その国語も“ビジュアルでわかりやすくコンパクトな”参考書でコスパよく勉強する
のであろうから、効果のほどは疑問である。
一方、欧米の教科書の宣伝文句には、didacticという単語が使われ、教師が語り聞かせる
ように書かれているというのが、一つの売りになっていた。図書館にはそういった資料を
揃え、本当に分かるための手助けができることが重要なのではないか。新しい分野の入門
に漫画その他のビジュアルな資料から入ることを否定はしないが、図書館はもっと知的で
あるべきなのではと、書店から出て体温以上の猛暑の街を歩きながら考えた。(櫻井)


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■ドクターのひとりごと■ 自由とはなにか?

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中高6年間の青春時代を男子校、しかも寮生活で過ごした。
コンクリート建築で有名な建築家が立てた寮、ひんやりとした廊下、薄暗い大浴場…。中
学1年から高校2年までが一つ屋根の下に、高校3年は隣の別棟に暮らす。低学年は6畳間に
二段ベッド2つの4人部屋で、もはや「塀の中」の様相である。朝7時に起床して掃除、朝
食。門限は18時で食堂は18時半まで。大浴場は18時50分まで。250人の寮生がいたが、シ
ャワーは6個のみ。順番待ちしても時間内に使えないので、ガンジス川の沐浴よろしく、
泥と汗が溶け込んだ大浴場のお湯で体を清める。19時まで大浴場にいると鉄拳制裁の上、
タオル一枚でコンクリートの廊下に正座という漫画の様な世界。

低学年は途中30分休憩を含む19時から22時半までが学習時間で、自習室に閉じこもる。私
語禁止、居眠り禁止、音楽禁止。漫画やゲームなどは寮に持ち込むことさえ許されない。
中学3年生以降は勉強時間が1時間プラスされ、自室学習となるが、当然、当直教員の巡視
つきである。育ち盛りのため、途中の休憩時間は仕送りのカップ麺を片手に食堂に人が集
まる。持ってない場合は皆から少しずつ恵んでもらうのだが、カップ焼きそばを持ってい
る人はヒーローであった。

1998年「ジョホールバルの歓喜」をご存じだろうか?サッカー日本代表が初めてW杯に出
場したあの時、僕は寮の中にいた。サッカーの放映時間はゴールデンタイムで学習時間と
丸被りである。当日、寮生たちから視聴する権利を訴える声が上がり、各学年の寮長が当
直の先生を訪ねて交渉を行った。全館放送で「サッカー放映中は自由時間とする!」の連
絡。歓喜で寮が揺れた。個人的には苦も無く過ごしていたが、今振り返るととんでもない
ところで暮らしていたなと思う。

出典は失念してしまったが、国語の教科書に「能(だったか舞だったか…)には型がある。
型を繰り返し、型が身について初めてそこから脱却する自由を手にする」といった内容の
文章があり、妙に心に残っている。自分の青春時代はテレビでW杯を自由に見られないほ
ど不自由だった。PC、スマホ全盛の今日、逆にそんな不自由を味わうことの方が難しいの
ではないだろうか?だとすると自由の意味も希薄になるのか?などとわが子を見ながら思
ったりする。そして、お父さんがその反動で自由を謳歌し過ぎているのは内緒である。
(さめ。)

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■編集後記■

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館長らしい辛口の「ご一考願い」はいかがでしたか?良書を収集・保存すべき図書館とし
て考えていかなければならない大事なテーマだと思っています。我が子には勉強だけでな
く、物語を想像して頭の中で世界が色づく楽しさも伝えたいと思っているので、トレンド
に染まってほしくないと考えてしまいます。
また、さめ。先生らしい体験談は酒席で聞くとさらに100倍面白い(文字にできない)お
話がありそうですが、「自由」という言葉が指すのは千差万別だろうな、とも思います。
皆さんからの視点もお聞きしたいです。ぜひご意見・ご感想をお寄せください。(笹)


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