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Faculty of Medicineインスリン分泌細胞におけるミトコンドリアの品質管理機構が明らかに

青柳共太 (生化学教室 講師)

今泉美佳 (生化学教室 教授)

研究のハイライト
  • インスリン分泌細胞におけるミトコンドリア品質管理に重要なVAMP7はオートファジー関連タンパク質Atg9aと共にはたらいていることを明らかにした
  • VAMP7と相互作用するHrb、SNAP-47、Syntaxin16がインスリン分泌細胞におけるミトコンドリア品質管理に関与することを明らかにした。

概要

 食事をして血中の糖(血糖)が増えると、膵臓にあるインスリン分泌細胞から血糖降下ホルモンであるインスリンが分泌され、血糖値が下がります。インスリン分泌細胞は血糖上昇に伴って細胞内へ取り込んだ糖をミトコンドリア(エネルギー産生工場)で代謝することによってATP(エネルギー通貨)を産生し、これによりインスリンを分泌しています。そのためインスリン分泌において、ミトコンドリアは非常に重要な役割を果たしています。ところが、ミトコンドリアははたらき続けると徐々に傷ついてはたらきが悪くなってしまうことが知られています。傷ついたミトコンドリアが細胞内に溜まるとATPを効率よく産生できなくなってしまうため、インスリンを分泌し続けるためには、細胞は傷ついたミトコンドリアを分解して細胞内のミトコンドリアを常にフレッシュな状態に保つ必要があります。
 細胞を構成する部品のうち、不要になった部品や機能が低下した部品はオートファジーと呼ばれる機構(細胞の自食作用)によって分解されますが、傷ついたミトコンドリアもオートファジーによって分解されます。インスリン分泌が低下した2型糖尿病患者のインスリン分泌細胞では、オートファジーによる分解の効率が低下して、傷ついたミトコンドリアが通常よりも多く観察されるようになります。これらのことから、オートファジーによる傷ついたミトコンドリアの分解は、糖尿病の発症に重要な役割を果たしていると考えられています。
 これまでに私たちはインスリン分泌細胞におけるオートファジーを介したミトコンドリアの分解にはVAMP7というタンパク質が関与していることを、VAMP7遺伝子欠失マウスを用いた実験により明らかにしてきました。本研究では、VAMP7がどのような機構でオートファジーを制御し、傷ついたミトコンドリアを分解するのかについて調べました。VAMP7と局在や挙動が共通するオートファジー制御タンパク質を探索し、またVAMP7と共にオートファジーの制御に関与するタンパク質の探索を行いました。その結果、VAMP7はオートファジーの制御に必須なAtg9aというタンパク質と協同してはたらくことにより、傷ついたミトコンドリアを分解していることが分かりました。さらに、VAMP7と結合するタンパク質のうち、Hrb、SNAP-47、Syntaxin16がVAMP7と同様、オートファジーを介して傷ついたミトコンドリアの分解に関与していることを明らかにしました。これらの結果は、インスリン分泌不全による2型糖尿病の新たな治療法の開発につながるものとして期待されます。
 この研究は大阪大学、北里大学、群馬大学との共同研究の成果であり、文部科学省科研費(基盤研究C)、群馬大学生体調節研究所内分泌・代謝学共同研究拠点、糖尿病学会若手研究助成金、武田科学振興財団、日本糖尿病財団の助成を受けて実施されました。


掲載論文
発表雑誌:Endocrinology
論文タイトル:VAMP7 regulates autophagosome formation by supporting Atg9a functions in pancreatic β-cells from male mice.
筆 者:Kyota Aoyagi, Makoto Itakura, Toshiyuki Fukutomi, Chiyono Nishiwaki, Yoko Nakamichi, Seiji Trii, Tomohiko Makiyama, Akihiro Harada, Mica Ohara-Imaizumi
(青柳共太、板倉誠、福冨俊之、西脇知世乃、中道洋子、鳥居征司、牧山智彦、原田彰宏、今泉美佳)
DOI: 10.1210/en.2018-00447

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