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顕微鏡用デジタルカメラはたいへん高価なものが多く,おいそれと購入する事はなかなか難しい.そこで,個人でも購入できる低価格なデジタルカメラを使用して,顕微鏡写真が撮影できるか試してみた.さて,うまく撮影する事が出来るでしょうか・・・・? 

東京都臨床衛生検査技師会 会誌1999年3月号 Vol.27 No.2, 156号特集記事 文章&Photo:高橋

イントロ


通常の顕微鏡用CCDデジタルカメラは,数百万画素オーダーのCCDチップを使用し,高画質の画像が得られる.それに比較し,個人ユーザが購入できる低価格のデジタルカメラは普及型で35万画素,高画質タイプが100万画素のものが中心で,前者は2万円台から,後者は6万円台から購入することが出来る.そこで今回,これらの低価格デジタルカメラで顕微鏡写真を撮影できるかどうか,テストリポートを行った.

撮影条件・器材

使用器材


カメラは,ソニー製デジタルマビカ(ズームつき:レンズf4.2〜42mm, f=1.8)を使用した.ちなみにCCDは40万画素で,クオリティはあまり高くない.保存は2HDフロッピーディスクにJPEG形式で保存される.

カメラ以外の器材は,三脚,雲台,顕微鏡,各種フィルター(ND,色温度調製用)など.今回は顕微鏡はオリンパス製BH-2型,三脚はソニー製のビデオ用のものを使用した.いづれも一般的な製品である.

三脚はテブレ防止のために必須.雲台は二点方式のものより,フリーストップの自由雲台がいい.

三脚を使用しなくても,「ビデオカメラ用プラットホーム」と称されるL字型のアダプターが在るので,それを利用してカメラを設置しても良い。

撮影方法


接眼レンズにカメラレンズを近づけて撮影する「コリメート法」で行う.接眼レンズ面に結像された画像をカメラレンズで捕え,CCDチップ面に画像を結像させる方法である.基本的にこの方法では,カメラレンズの拡大率分だけ画像が拡大されるので,目でみたときのような高視野は得られない.

撮影のコツは,レンズとレンズの距離を平行かつ出来るだけ近づけることだ.カメラにモニターがついていると確認が便利.

カメラの設定


カメラの設定は,オートフォーカス,プログラムAEはデフォルト,画質は「FINE」及び「FRAME」で行った.撮影時はテブレ防止のためセルフタイマーで撮影した.また,ズームも使用した.

顕微鏡の設定


色温度調整用に「KB-3」,光量調製用のNDフィルターは今回は使用しなかった.顕微鏡の光量はその都度調整した.

画像処理


得られた画像はAdobe Photoshop 4.0.1でレベル調整を行った.画像は100dpi,横幅5cmに調整しなおし,JPEGで保存した(一部除く).

結果

画像のケラレ(その1)


写真は倍率200倍で撮影したもの.ズームをあまり行わなかったので画像の周囲がケラレてしまった.中心像は良好だった.

上の条件でさらにズームを最大にしたもの.ケラレは殆ど無くなりきわめて良好な画像が得られた.好酸球の顆粒の色も良好である.(画像をクリックすると拡大画像)

画像のケラレ(その2)


この写真は40倍で撮影したもの.光量が多く絞りが自動的に作動したためこのような楔型にケラレてしまった.(アイリスというのかな?)

顕微鏡の光量を落として撮影したものがこれ.色温度が低下して赤みが帯びてしまったが,先程のようなケラレは無くなった.

しかし,40倍という低倍率では40万画素CCDでは分解能が高くなく,実用的ではなかった.

100倍での画像


100倍で撮影したもの.40倍で撮影した画像よりも幾分良好な感じに見える.このあたりが最低使用限界かと思われる.

1000倍での画像


1000倍で撮影したもの.好中球・杆状核球一個分しか画面に収まらなかった.もう少しレンズを近づけ,ズームを引くと良好になると思われる.

まとめ


  1. 原理的には可能だと思っていたが,実際に撮影してみて意外と良好に撮れた事に驚いた.しかしながら,低倍率ではCCDの解像度の低さで実用的ではなかった.この問題は,最近発売された100万画素のCCDチップを搭載するカメラならば解決できると考えられる.
  2. うまく撮影できる方法として,カメラに10倍程度のズームが付いていると好条件で撮影できる.単レンズだと下手をすると,単なる明るい光束しかみれない可能性がある.その点,マビカはデジタルカメラの中では特質とした10倍ズームが搭載されていたので,助かった感がある.
  3. また,リアルタイムの撮像画像を確認するために,LCDモニターは必須だ.ファインダーだけのデジタルカメラもあるが,この場合,顕微鏡の光軸がカメラレンズの光軸と一致しているかどうか全く判らない(致命的な問題).マビカに搭載されている2.5インチTFT液晶は少し解像度が荒く,ピント出しに苦労したが使えないものではない.ただ,秒間フレーム数がビデオカメラ並みなため,コマ送りのよう現象がまったく見られないので,撮影したい視野の選定,ピント出しには苦労しない.
  4. 接眼鏡の視野の広さもたいへん重要だ。各メーカーから広視野タイプの接眼鏡が発売されているので,それを利用したい。
  5. 全体的な感想だが,得られた画像は閲覧用・Web用等には使用に耐えるが,画像解析には定量性の問題・画質の面から難しいだろう。