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骨髄の赤芽球を解析page1/1

1 特 性
2 形態変化
 骨髄の赤芽球系は.細胞分裂と成熟によって赤血球になり1),血液中へと送り出される。その成熟までの様子を解析してみよう.

1 特性

1)赤芽球系前駆細胞まで2分裂して,2個の前赤芽球になる。それぞれが4回分裂して,32個の赤血球になる。
2)前赤芽球から血色素合成を開始l)する。
3)血色素合成速度は前赤芽球から一定。
4)脱核という離れ業で「造血微小環境」から文字どおり離れる。

3)多染性赤芽球・I図 2m,n):

mは分裂直後から細胞質の好酸性の色調増加。クロマチンは粗大塊状。細胞質の塩基好性は残存。血色素の好酸性色調と重なり多染性赤芽球と呼ぶ。

4)多染性赤芽球・II図2p,q):

qは直径4〜5マイクロメートルの球状の核が容積の約半分を占める・脱核の終了で網状赤血球となり,血色素合成能がわずかに残る。

 こうしてみると,直径の異なる同一名称の細胞があることか十分理解できる。

 分裂像は一括できるが,分裂直後からは直径だけでは分類できず,核の直径とクロマチン構造,細胞質の色調で鑑別する。一般に骨髄像の報告書には大赤芽球(マクロブラスト)の欄があるが,大赤芽球をどう鑑別するのが問題点であり,妊娠後半の大球性貧血の理解,大赤芽球の臨床的意義,その鑑別では,赤芽球系の形態学的な解析と表現2)が必要になる。

 読者は赤芽球系の鑑別で細胞分裂に伴う直径,容積の鋸歯状の変化(図1)をどのように判断し見分けておられるだろうか?

2 形態変化(図2a〜q)

1)前赤芽球

aの前赤芽球はbよりも幼若。核のクロマチンは繊細顆粒状で核小体は次第に大型,淡青色になり,2〜3個認める。cはヘチマの輪切りで製作した核のクロマチン模型。細胞質はグロビン合成やヘム合成系の酵素蛋白を作るのに必要なポリリボソーム(図2dはその模型)が豊富で,塩基好性が強く濃青色に染まる。前赤芽球の血色素量は14.4pgまでになる1)が,血色素の存在は普通染色ではまだ確認できない。また,ヘムを合成するミトコンドリア(図2eはその模型)もゴルジ野と同様に染まらず,青い細胞質内に白く抜けて点在する。fは前赤芽球の分裂で,細胞質成分は二等分される。骨髄像の実際では,赤芽球系の分裂像を一括表示する.

2)塩甚好性赤芽球図2g,h):

hはクロマチン構造に顆粒状の集塊が生じ,核小体は不明。細胞質の塩基好性も減少し,微細な白点も目立つ。塩基好性赤芽球の前半・Iである。図2j,kは塩基好性赤芽球の後半・IIである。核小体はなく,クロマチンは粗大塊状。

文献

1)Bessis(八幡義人訳):血液細抱へのダイナミックアプローチ 第1版,26,文光堂,東京,1985
2)中竹俊彦:骨髄像の解析と表現.第1巻,1993(出阪連絡先:杏林大学保健学部臨床血液学教室)
出典
中竹俊彦,関根名里子:血液細胞の社会をのぞく(3)骨髄の赤芽球を解析.医学検査43巻 5号.