研究推進センター長挨拶

研究推進センター長
櫻井 裕之
杏林大学医学部薬理学教室 教授

 2022年度より研究推進センター長を拝命いたしました。
 本学の体制として、研究の手ほどきは主に大学院の役割になりますので、当センターの主なターゲットは自立した研究者(教員)ということになります。ハード、ソフトの両面で皆様の研究環境の改善に尽力する所存ですのでよろしくお願い申し上げます。

 私はもともと内科医で、卒後大半の同級生が大学病院での研修を選択するような時代だったのですが、研究よりは臨床に強くなりたいと市中病院で研修し、研修終了後一時大学に籍を置きましたが、やはり臨床医学を深めたいとアメリカの病院で内科研修をすることになりました。
 このような人間に研究推進を任せてよいのか?とお思いになるかもしれません。アメリカで臨床を始めたころ、evidence based medicine 、すなわち科学的根拠に基づく医学が脚光を浴びはじめた頃でした。既知の医学から導き出された最善の治療法であるはずのものが、大規模臨床試験で有効性を示せないという例がいくつも出てくると、前提としての病気についての理解がまだまだ未熟ではないかと考えるようになりました。人体や病気についての理解を深めるためには研究するしかありません。かくして3年間の臨床のあとは、基礎研究に進み、帰国して本学薬理学教室に着任して基礎研究を継続しています。
 アメリカにいる間は腎臓の発生を研究していたのですが、本学医学部で学生教育に携わる中で、薬理学教科書の記載に疑問があったり、学生実習の中でうまく説明できないような結果がでてきたりといったことがあり、そのような問題を解決するために実験することがありました。研究するのに、大きなテーマは必ずしも必要でなく、日々の臨床や教育の中に未知のことは数多くあることに気付かされました。
 どの専門分野でも、研究の原点として、未知のことを解明する志、すなわちリサーチマインドを持つことが大切なのではないかと思います。問題に気づくだけでも知的好奇心をくすぐりますし、幸運にも自らの研究で新たな知見が得られるのは楽しいものです。教育だけでなく、新たな研究成果を生むのが大学の社会的使命だと大上段に振りかぶらなくても、杏林大学に属するすべての人が、日々の業務の中でリサーチマインドを発揮していくことが、研究活性化の鍵でないかと考えています。研究の活性化について述べてきましたが、研究にはそれに伴う責任があります。研究倫理のスタンダードを知り、それに則った手法で行う、倫理的に正しい研究であることが大前提です。

 杏林大学のすべての方のリサーチクエスチョンを倫理的に正しい研究へと実現していくお手伝いのできる研究推進センターを目指します。