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第6の不思議 | |||||||||||||
「9時に出たら」って,未来のこと? 過去のこと? | |||||||||||||
1> 9時に出たら間に合います。 2> 9時に出たら間に合いました。 この2つの文の違いは明らかだと思います。 1>ではまだ出ていません。 2>では2つの場合があって a) 実際に9時に出てみたら,間に合いました。 b) 9時を過ぎてから出たので間に合いませんでした。 というようなことになっています。 「9時に出たら」の部分を「前件」と呼び,「間に合います/ました」の部分を「後件」と呼びます。 |
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1>と2>の前件の形は「9時に出たら」で,まったく同じです。しかし表す状況はずいぶん違っています。 1>の前件は未来の出来事で,実際の(実現)確実性は,100%の場合もありますが,まあ,50%(実際には1%〜99%の間)であるということができるでしょう。 2>の前件は, a) 過去の実際に生起した出来事で,(実現)確実性は100% b) 過去の生起しなかった出来事で,したがって(実現)確実性は0% という a), b) 2つの場合があります。 それで,この前件の違いは, |
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と表すことができます。このような数字で表すと,こまごました説明をしなくても違いがよくわかります。 では,日本語ではこんなにも状況の違う前件を,どうしてまったく同じ形で表すのでしょうか。日本語があいまいな非論理的な言語であるからでしょうか。 上のような文の前件を「条件文」と呼びますが,日本語では過去のことなのか,現在・未来のことなのかは後件の文で表すようになっていますので,その前件の文が条件文であることを示せさえすれば,そのような細かい違いを前件の中で言語形式で表す必要はありません。「たら」を使えば,その文が条件であることを示せてしまうので,まったく同一の前件の形でいろいろな状況が示せることになります。(アスペクトについては別の機会にゆずることにします。) 英語ではこの場合,次のように異なる前件の形を使わなければなりません。 |
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日本語がこのように単純で便利であるのは,日本語が非論理的な言語だからなのでしょうか。いいえ,決してそうであるからではなく,日本語が合理的な言語であるからです。日本語が無駄を省いた効率の良い言語になっているからです。言語は長い歴史の中で合理性を獲得していきますが,日本語の場合はこのような形で合理性を実現しています。 |
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