第4回レポート →研究室トップにもどる | ||||||||||||||||||||||
第8の不思議 | ||||||||||||||||||||||
「〜したら」条件の舟はすべての水域に浮かぶ? | ||||||||||||||||||||||
第7の不思議では,水域図(時域図)が便利だということになりましたが,では「たら」の条件文もこの水域図で出来事の位置を確認することができるのでしょうか。……できるはずです。 たとえば 3> この宝くじが当たったら,旅行に行ける。 という文では,前件の舟は未来において,当たるかどうかは50%(1%〜99%)の確実性にありますから「未来50」の水域(時域)にあります。 また, 4> これだけ資料があったら,いいものが書けます。 という文では,前件の舟は現在実現している状況ですから,「現在100」の水域にあるということができます。 このようにして,次のそれぞれの前件の舟もどこかの水域(時域)に位置づけることができます。それぞれがどの水域に浮かんでいるかを考えてみてください。
|
||||||||||||||||||||||
10>では後件に話者の推測的な判断が置かれていますが,この水域(つまり「過去100」)の場合,後件が何か具体的な出来事であれば,その出来事が前件に引き続いて生起したことを表すことになり,「継起性」も前面に出てきます。前件が後件生起の原因・きっかけになっていること等を表します(「私がそのことを言ったら,彼女は急に笑いだした。」) なお,100%の前件は「確定前件」,50%の前件は「不確定前件」,0%の前件は「非実現前件」と呼ぶことができます。 |
||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||
「不確定前件」(50%)と「非実現前件」(0%)は「仮定前件」と呼ぶこともできます。「仮定前件」の両者(50%,0%)には「もし」を使うことができます。 また,各水域それぞれに特性がありますが,今回は触れないことにします。 前件と後件の意味的関係は7種類ほどありますが,これについても今回は触れません。 |
||||||||||||||||||||||
ところで,これを読んでいる方に,もし日本語を教える機会があったら,そして条件を扱うことになったら,そのときはこの水域図(時域図)を役立ててください。 ……つまり,[未来50]を教えるときはその水域に集中し,まちがっても[未来100]や[未来0][過去100]等の例文を混入させたりしないよう,一つ一つこの図で確認してください,ということです。 ……「雨が降ったら中止します。」(未来50)を教えているときは「食事が終わったら出発します。」(未来100)や,「手が3本になったら,この仕事は半分の時間でできます。」(未来0),「雨が降ったら涼しくなりました。」(過去100)などは例文にしないでください,ということです。(もちろん,「仮定」ということであれば,0と50は混在させてもよいわけですが。) 教える側にとってはみな「たら」になってしまうので,うっかりすると水域の異なるものを混入させてしまう恐れがあります。学習者の母語では水域ごとに異なる表現をとっている可能性もありますので,教える側が気づかないのに,学習者の側が気づいていて混乱を引き起こしているという事態もありえます。注意が必要です。 |
||||||||||||||||||||||
では,4回目のレポートはこれで終わりますが,第6の不思議から第8の不思議まで,いろいろな細かいことを省略してお話ししましたので,疑問が生じたことと思います。そのような場合には『日本語構造伝達文法 発展A』のA ![]() |
||||||||||||||||||||||
「研究室トップ」へ | ||||||||||||||||||||||