ビタミンEの取り過ぎで運動効果が台無しに? ー抗酸化サプリの最適量を解明ー 理学療法学専攻 鈴木里奈さん、柴田茂貴教授
研究のハイライト
- 運動によって生じる酸化ストレスは健康効果を生む一方、過剰になると炎症の原因となる。
- ビタミンEを「適量」摂取した場合のみ、炎症を抑えつつ運動適応(PGC-1α発現)を促進することを確認。
- 高用量の抗酸化摂取は運動の生理的適応を阻害する可能性が示された。
概要
杏林大学大学院保健学研究科保健学専攻リハビリテーション学科(現:if株式会社CEO)の鈴木里奈さんが筆頭著者、杏林大学保健学部リハビリテーション学科 理学療法学専攻の柴田茂貴教授が責任著者となった研究チームは、運動時の抗酸化サプリメント摂取量が、酸化ストレス・抗酸化能力・炎症反応に与える影響を検証しました。
研究ではラットに様々な量のビタミンEを摂取させた上で有酸素運動を行い、運動が身体に与える良いを比較した結果、中等量のビタミンE摂取では運動による炎症反応を抑えながら、適応反応(運動による身体に良い反応)が促進されることを確認しました。一方、高用量のビタミンE摂取は酸化ストレスを減少させるなど一定の効果があるものの、運動に伴う炎症反応は増加するという結果が得られました。
抗酸化サプリメントの摂取は「多ければ多いほど良い」のではなく、その効果を最大限発揮するための適量が存在することが示されました。
この研究成果は、アスリートのサプリメント摂取戦略や、生活習慣病予防における運動療法の最適化に貢献することが期待されます。
背景
近年、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病の背景には、慢性的な炎症や酸化ストレスが関与していることが知られています。
運動はこれらを改善する有効な手段ですが、運動によって一時的に活性酸素(ROS)が増加します。ROS産生はミトコンドリア機能の改善、抗酸化酵素の発現、代謝機能の改善などの効果を引き起こす重要なシグナルです。一方、過剰なROS産生によって生じる酸化ストレスは炎症や組織ダメージの原因となるため、これを防ぐために抗酸化サプリメントの利用が広く行われています。しかし近年の研究では抗酸化サプリメントが運動効果を弱める可能性も報告されており、抗酸化サプリメント摂取の是非について議論が続いていました。
研究方法
Wistar系ラットを以下のグループに分けて比較しました。
- 運動なし群
- 運動群(ビタミンE通常量)
- 運動群(ビタミンE中等量)
- 運動群(ビタミンE高用量)
運動はトレッドミル走を用いた低負荷トレーニングと高負荷トレーニングの2段階で8週間運動を実施しました。その結果、中等量ビタミンE摂取群において最も良く炎症が抑制され、PGC-1α発現が増加し運動効果を最も引き起こしました。
研究の意義
本研究は抗酸化サプリメントには「ホルミシス(適量効果)」が存在する可能性を示した初めての研究であり、アスリートの栄養戦略、運動療法、サプリメント設計など新しい科学的根拠を提供するものです。私たちは「身体に良い」と聞くと、できるだけたくさん摂取したくなってしまいますが、少し慎重になるべきです。

掲載論文
雑誌名
Journal of Science in Sport and Exercise
論文タイトル
Effects of Different Doses of Antioxidant Intake on Exercise-Induced Oxidative Stress, Antioxidative Capacity and Inflammatory Responses
著者
Rina Suzuki, Akiko Yamaki, Hiroyasu Murata, Kazukuni Hirabuki, Noritaka Hata, Ai Hirasawa, Ken Muramatsu, Takeaki Matsuda, Shigeki Shibata
DOI
https://doi.org/10.1007/s42978-025-00368-2
問い合わせ先
研究内容に関する問い合わせ
杏林大学
柴田 茂貴
TEL: 0422-47-8000
E-mail: shigekishibata@ks.kyorin-u.ac.jp
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