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臨床

当科の診療内容

当科は、東京都多摩地区で唯一の大学病院の精神科本院として、うつ病、双極性障害、不安症、統合失調症、睡眠障害、摂食障害、認知症、パーソナリティ障害、神経発達症など多岐にわたった精神科診療を行っています。年間で、専門の開放病棟に400名超の患者さんが入院する他、外来には約1,300名の初診患者さんが訪れ、延べ26,000名が通院しています。このように症例数が豊富な中、指導医とチームを組んで診療に携わることで、しっかりと基本から精神疾患の症候や治療を学ぶことができます。救急外来や他の科からの依頼も多く、様々な場面における初期対応も習得することができます。専門研修プログラムを終える頃には、各種資格に十分な症例が集まっているだけでなく、患者さん一人一人に最善の医療を提供できるようになっていることでしょう。

当科ならではの特徴

精神科診療をオールラウンドに行うだけでなく、特に力を入れている分野があります。

  • うつ病や双極性障害の診療:うつ病は社会的損失の最も大きい精神疾患であり、同じく気分障害の双極性障害と合わせると、精神疾患の実に約半数の損失を占めるとされています。当科はこれらの診療に最も力を入れており、年間約200名もの気分障害の患者さんが入院します。特に、難治性うつ状態を対象に詳細な評価や検査を通して診断・治療を検討し直す専門的な入院を行っており、全国から患者さんが集まってきます。これらの診療に関わることで、患者さんが悩むようになった背景の問題に気付き、適切な対応法を診立てることができるようになります。希望に応じて、専門家のスーパーバイズのもとで精神療法(認知行動療法・対人関係療法)を学ぶこともできます。
  • 睡眠診療:当科は日本睡眠学会専門医療機関に認定されており、積極的に終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)、睡眠潜時反復検査(MSLT)などの睡眠検査を行い、持続陽圧呼吸(CPAP)療法を導入しています。また、アクチグラフや睡眠活動記録表で睡眠・覚醒リズムや行動量を測定し、睡眠障害のある患者さんの診断の一助としています。これらの検査に日頃から関わるため、脳波検査にも抵抗がなくなり、睡眠障害を十把ひとからげに薬で治療せずに、適切な対応をとれるようになります。
  • その他、各種疾患に対する電気けいれん療法(ECT)、治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン、妊娠や身体合併症を有する精神科患者さんの治療、小児科と連携した思春期精神疾患の診療、画像検査や神経心理検査も利用した認知症への対応など、大学病院精神科の責任を果たすべく真摯に診療を行っています。

研究

当教室が行ってきた、もしくは行っている研究活動

  • 難治性うつ状態に関する研究:当教室が強みにしている気分障害、特に難治性うつ状態の診療を通し、「なかなか良くならないうつ」の背景にはどのような要因が隠れているか、それを突きとめるにはどのような評価や検査をするべきか、研究しています。さらに2022年度からは、治療抵抗性うつ病に対し有効性が最も高いと海外で報告されているケタミンの臨床研究に着手します。この研究では、ケタミンでどのような効果が出るか詳しく評価するとともに、血液の中で代謝物質がどのように変化すると効果が出やすく再発しにくいかを検証します。
  • 産業精神保健に関する研究:当教室では、患者さんの症状を改善させるだけでなく、患者さん一人一人が社会で再び活躍できるようになることを目指しています。多くの医局員が嘱託産業医に従事しており、うつ病などの精神疾患を有する患者さんが退院後に就労するには、どのような要因が大事かを検証する研究も行っています。また、うつ病を抱えながらも働く患者さんに休職・復職の判断がどのようになされているか、全国的に調査しています。
  • 睡眠医学:睡眠診療のクラウドデータベースを用い、精神疾患を有する患者さんが睡眠の治療をどれくらい適切に継続できているかを調査しています。さらに、神経発達症にはしばしば睡眠覚醒リズムの障害が合併しますが、入院加療によって、どこまで生活リズムや行動量が改善するのか、当教室が日本語版を開発した評価尺度も用いて検証しています。
  • 適切な治療の発信:当教室は、日本うつ病学会と深く関わり、うつ病や双極性障害の治療ガイドラインを作成する核となっています。また、うつ病や統合失調症の治療ガイドラインを全国的に普及させるプロジェクト(EGUIDEプロジェクト)の中心的役割を担っており、診療の質に関する研究も行っています。さらに、日本臨床精神神経薬理学会の専門研修施設であり、日本精神神経科診療所協会と合同で双極性障害研究を行ったり、各種疾患のエクスパートコンセンサスを発信したりしています。
研究1

他の医療機関と連携して行っているその他の研究

  • AIを利用したオンラインメンタル評価・対応
  • インターネットを介した遠隔認知行動療法
  • うつ病における遠隔評価と対面評価の比較
  • 患者さんと医療者の共同意思決定(SDM)による効果
  • うつ病の患者さん(当事者)向けガイドや治療意思決定支援冊子の作成
研究2

近年の主な研究業績(2021年以降)

  1. Sakurai H, et al. Novel Antidepressants in the Pipeline (Phase II and III): A Systematic Review of the US Clinical Trials Registry. Pharmacopsychiatry (in press)
  2. Katagiri T, Kurihara M, Oe Y, Ishii M, Onoda N, Hayasaka T, Kanda Y, Imamura Y, Watanabe K et al. Improving Employment Through Interpersonal Psychotherapy: A Case Series of Patients With Treatment-Refractory Depression. Front Psychiatry 12: 617305, 2021
  3. Kanda Y, Watanabe K, et al. Reliability and validity of the Japanese version of the Biological Rhythms Interview of assessment in neuropsychiatry-self report for delayed sleep-wake phase disorder. Sleep Med 81: 288-293, 2021
  4. Tsuboi T, Watanabe K, et al. Factors associated with non-remission in bipolar disorder: the multicenter treatment survey for bipolar disorder in psychiatric outpatient clinics (MUSUBI). Neuropsychiatr Dis Treat 16: 881-890, 2020
  5. Imamura Y, Karita K, Watanabe K, et al. Associations between daily lifestyle characteristics and latent depressive symptoms in elementary school children: a cross-sectional survey. Acta Medica Nagasakiensia 64: 53-59, 2020