ホーム >  教員のつぶやき  >  在学生および学部志願者に読んでほしい一冊 2

ガエル・ファイユ『ちいさな国で』(加藤かおり訳、ハヤカワepi文庫)

アフリカにあるちいさな国の出来事。ギャビーはどこにでもいそうな十代になったばかりの少年。仲間といたずらをしたり冒険をしたり楽しい毎日を過ごしていた。時折訪ねる祖母や曾祖母、伯父さんからも家族の交わりや刺激を感じとっていた。総じて幸せな日々だった。これがある時を境に波乱の日々に変化した。内戦が勃発し、身の回りの人々がいら立ち、家族や知り合いの消息が次々に途絶えていく。ジェノサイド(大虐殺)で知られるルワンダとその隣国ブルンジが物語の舞台である。作者はブルンジからフランスに移り住んだキャラメル色の肌の青年。その後ラッパーや自作の詩を朗読するスラマーとして活躍している。この作品からはその生い立ちと歴史の情景が生き生きと浮かびあがってくる。2016年にフランスで高校生が選ぶゴンクール賞を受賞した。物語の時代と場所は今の日本から随分かけ離れてみえるが、人の営みには通じるものがあり共感するところが多い。文庫本なので手軽に入手できる。高校生、大学生にお薦めしたい一冊である。

(知原信良 総合政策学部教授、「中東・アフリカの政治・経済」担当)

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