中竹 俊彦

 リンパ球を追う(シリーズ100リンパ球の世界(I)-1-6.複数、大型核小体の出現

リンパ球の世界(I)

  ‐リンパ球の核心に触れる‐

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

1−6.複数、大型核小体の出現

 例えば、PHA添加培養したリンパ球(リンパ球幼若化現象)では、5個までの複数の核小体、あるいは大型の核小体の出現と、強い塩基好性の増加がよく知られています。

 Tリンパ球が血中、あるいはリンパ節で活性化されると、その核小体はポリメラーゼ(polymerase I;pol I)を使ってリボソームRNA(rRNA)を直ちに増しています。その実験例はPHAを末梢血リンパ球に加えて培養し、染色体分析が可能になる例です。

 核小体形成に続いて、核の遺伝子からpolymerase II(pol II)でコピーして、供給されるべきIL分子構造を決める遺伝情報(mRNA)の到着を待ちます。そしてIL遺伝情報(mRNA)が届けばrRNAはその鎖を読み取れる形に結合して、さらにpolymerase III(pol III)が造ったtRNAから必要なアミノ酸を受け取り、順に結合して特定のILが完成します。

 一方、Bリンパ球は、リンパ節内で抗原による活性化と同時に、Tリンパ球由来のIL類の刺激を受けて形質細胞へと分化を始めます。この過程では、いくつかのBリンパ球由来のIL類を産生し、さらに前駆形質細胞へ分化します。この過程は「濾胞樹状細胞」を取り囲んでBリンパ球が大幅な絶対数の増幅を目指し細胞分裂を続けるので、濾胞の中心の部分は分裂像を伴う大型で多数のBリンパ球(リンパ胚球:濾胞中心付近にある大型のリンパ芽球)の大集団に発達します(二次濾胞の形成)。

 その後、形質細胞への分化の決まった(免疫グロブリンタイプの決定した)Bリンパ球は、その多くがリンパ節から出て、血流に乗って骨髄へ移動(回帰)し、骨髄で組織球に接着して支持を受けた後、リンパ形質細胞様細胞(lymphoplasmacytoide cell)の形態にとどまることなく、さらに上記の前駆形質細胞から分化・成熟を経て、形質細胞へ最後の分化を達成します。

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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