中竹俊彦 リンパ球の世界(IV)-リンパ球形態の各部の意味(2007)-1.末梢血のリンパ球群の性質、2.細部の所見、3.観察と形態(各部の意味)の表現

リンパ球の世界(IV)

 リンパ球形態の各部の意味

1.末梢血のリンパ球群の性質

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 リンパ球の形態の重点事項として挙げられることは以下のように、

 1)核のクロマチン構造の変化と核小体がある

 2)核/細胞質の面積比(N/C比)が変化する

 3)細胞質の塩基好性の増加と微細な斑点がある

 

これらの他にも、

2.細部の所見

 としては、

 4)染色されにくいために生じるミトコンドリアに相当するとみられる透明な斑点状構造がある

 5)細胞辺縁の微妙な凹凸を含めて絨毛のように微細に辺縁が突起して変化する様子が生じる

 6)核のまわりの明輪(明るい、カサ状に生じるヘイローhalo;暈:うん)から発達して明らかになる粗面小胞体などをイメージできる所見があること

 7)核周明庭(ゴルジ野)の存在とその発達があること

 8)アズール顆粒の数と顆粒の大小の違いがあること

 9)微細な空胞、空胞の意味があること

などででしょう。

3.観察と形態(各部の意味)の表現

 そこで、私たち観察者にとって大切なのは、リンパ球をみて上記の実態を認識できる「細胞学的な知識」とその事項への「観察能力」、そして情報伝達のために重要な「言葉による形態の表現力」でしょう。

 その表現力の意味について、以下に簡単に述べます。

 私たちがリンパ球のこれらの所見をお互いが共通の言葉で表現し、あるいは役立つ情報として交換するには、あらゆるリンパ球の形態表現に対応できる学習意欲と、観察に基づく認識力、表現力を訓練しておく必要があります。表現力とは、リンパ球の形態と機能を多面的にみる訓練そのものからできてくる形態を言葉に翻訳する能力だろうと思います。

 当然のことながら、用いる血液塗抹標本は正しく採取された血液から、経時変化を受けないよう直ちに、もしくは分単位で可及的速やかに、理想的な塗末標本を作製し正しく染色されたものでなければ、約束の基盤が崩れてしまうでしょう。「話にならない」とは、約束の基盤が崩れた状態であろうと思います。

 末梢血のリンパ球は、個々に性質が異なることは他のシリーズで記述しました。リンパ球のサブクラスと性質の違いは、細胞性免疫学にゆずります。

 ここでは普通塗抹標本を念頭に置き、リンパ球に対する刺激によってリンパ球が活性化されると、どのような反応性変化を示すかについて述べます。

 リンパ球とは、活性化されること自体に細胞としての特徴、特性があります。その観点から出発して、反応の質的、量的な異常を考察してみることにします。

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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