中竹俊彦 リンパ球の世界(IV)-リンパ球形態の各部の意味-4.末梢血リンパ球の活性化

リンパ球の世界(IV)

 リンパ球形態の各部の意味

4.末梢血リンパ球の活性化

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 私たちが末梢血リンパ球の活性化を中心において考え、理解しようとするとき、リンパ球への刺激とは何か、刺激物質にはどんなものがあるのか、特異的刺激とは何か、刺激伝達(伝わり方)にどんな種類の伝達ルートがあるのか、刺激への応答(反応)性とはどういうことか、 刺激に対する応答は特異的か、特異的な刺激に対して応答性には多様性が伴うのかなど、さまざまな疑問がわいてきます。

 リンパ球はサイトカイン(ことに、IL-2など)特異的な抗原、あるいは、非特異的刺激物質などで活性化された状態にあるとき、私たちは活性化リンパ球のどこの形態を、どのように観察すれば、活性化された活動状態を知ることができるのでしょうか。

 「活性化」の証拠(裏づけ)として列挙できる形態は、次のようなことだと思われます。以下のリンパ球の形態学的事項について、「リンパ球の特性」をもとにして「リンパ球の形態と機能の関係」および、「リンパ球の活性化に伴った形態学的変化」として記述してみます。

(1)細胞質辺縁の形態変化(紡錘形、手鏡様などの形態変化)

(2)細胞質の塩基好性(RNA)の増加

(3)核のクロマチン構造の繊細化

(4)クロマチンの繊細化の意味

(5)核のDNAの安定性と突然変異

(6)クロマチンの濃縮と核の固さ

(7)核小体の明瞭化とその機構

(8)核小体の数の増加と大きさ

(9)核膜の再構成と核膜の面積の増加

(10)核周明庭(ゴルジ野)の発達

(11)核のクロマチン量(DNA量)の増加

などが活性化リンパ球の形態と機能で問題点になります。以下に、基本的なこれらの細胞生物学的な意義と考え方をまとめてみます。

 厳密にクロマチン量を知るにはクロマチンを蛍光染色して、蛍光顕微鏡を応用した測光装置によらなければなりません(自動化したのが、フローサイトメトリーです)。

 核のクロマチン量が静止期の細胞よりも多いと判断されるならば、その細胞はDNA合成が終了すればいずれ細胞分裂すると推定するか、又は過剰な染色体数のために大きな核となりクロマチン量の増加になったか、もしくは4倍体の異常な細胞という判断基準になるでしょう。

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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