中竹俊彦 リンパ球の世界(IV)-リンパ球形態の各部の意味(2007)-7.核のクロマチン構造の繊細化

リンパ球の世界(IV)

 リンパ球形態の各部の意味

7.核のクロマチン構造の繊細化

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 正常なリンパ球すなわち静止期の核(2倍体:2N)をもつリンパ球は、多くのクロマチンがゆるくまとまり、特定の部位は不活化されているので、クロマチンは濃縮(不活化)状態です。

 部分的にしろ、核のクロマチン構造の繊細化は、そのリンパ球の性質に応じて特定部分から遺伝子が活性化されて、ある特定の産物をつくることであり、前記の塩基好性の増加に先立つ変化です。

 核のクロマチン構造が核の全体にわたって繊細になり、大きな核(4倍体:4N)になっていくときは、DNA合成期(S期)です。核小体が明瞭に大きくなり、細胞質の塩基好性も必然的に2個のリンパ球分に増加するまで細胞成分を合成する必要があるので、核の容積は大幅に増加します。

 このような変化は、末梢血の正常なリンパ球形態の範囲では起こることはなく、すでに述べたようにもっぱらリンパ節へ定着してから起こるはずのものです。

 もしも、血中にこのような大型のリンパ球があれば、平常なリンパ球ではありません(異型リンパ球は例外として)。すなわち血中で細胞分裂に向かうという異常事態であり、著しく活性化されたリンパ球か(上記の、異型リンパ球の一部)、リンパ性白血病その他の腫瘍細胞を疑わせる所見です。分子レベルでは特定遺伝子の活性化を遺伝子増幅やmRNAの確認という手法で確かめてみる考え方、方法があります。

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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