中竹俊彦 リンパ球の世界(IV)-リンパ球形態の各部の意味(2007)-11.リンパ球の核小体の明瞭化とその機構

リンパ球の世界(IV)

リンパ球形態の各部の意味

11.リンパ球の核小体の明瞭化とその機構

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 核小体の明瞭化はS期であり、細胞の活動が活発化していることを意味します。また、例外的に核も細胞質も萎縮しているのに核小体が認められる場合には、核小体が形成された後の段階でその細胞に活動の停止機構が働いたことが推定されます。この場合は、核小体があるのにクロマチンも粗剛になります。粗剛になったクロマチンではそのままではS期を経過できないと思われます。

 蛋白を合成するリボソームは、細胞分裂に先立って特定の遺伝子(後述、テキスト第2巻:21−8.「核小体の数の増加と大きさ」参照)から活性化され、核小体内でrRNAが準備されます。また、リボソーム分子の約半分を占めるリボソーム蛋白質は、細胞質の別のリボソームで合成されて核膜孔から核内へ入り、核小体内で複合体となり、リボソーム粒子として構成されます。

 リンパ球は刺激で活性化され、伝達された刺激の特異性に応じてサイトカインを産生します。サイトカインの遺伝情報は、核のDNAにある特定の遺伝子からmRNAに転写され、特定物質の遺伝情報(mRNA)に基づき、インターフェロン又はインターロイキンなどサイトカイン類のうち特定のものとして合成されます。

 新規に蛋白性の物質が合成されるためには3つの準備、つまり、mRNAの他にtRNA、rRNAの3点セットが必要でです。リボソームは核小体で準備されるので、細胞が活性化されると核小体は大きくなり、明瞭化します。核小体の核内での境界は、塩基好性が強いほど明瞭ですが、電顕によっても核小体には膜構造はないことが明らかです。  

 核小体はリボソームの量を反映して、一時的に塩基好性が強まります。まず、主要なrRNAはその遺伝子すなわちDNAのrRNAに関する遺伝子からRNAに転写され、45Sの沈降定数をもつ大分子のRNAとして産生されます。単位のSは、超遠心分画法による沈降定数で開発者スベドベリ:Theodor Svedbergの名前の頭文字からとった超遠心分画法の沈降速度を示す単位です。

 45Sという大きさとの比較のために例えると、IgG分子の大きさは分子量が150kDaで沈降定数6.6S、また、IgMは900kDaで沈降定数19Sです。先のリボソームの45Sという大きさが、いかに大分子なのかが分かります。rRNAは核小体内で多量に産生されているようでも規定された量であろうと推定され、核小体内で複雑な過程を経て、細胞質でつくられた蛋白質との複合体を構成してから、さらに大、小2種類のリボソームのサブユニットに分離さます。

 大サブユニットの構成は3分子のRNAと40種以上の異なるリボソーム蛋白質との複合体で、小サブユニットは1分子のRNAと33種の異なるリボソーム蛋白質との複合体といわれています。大、小2種のサブユニットは、核小体を出て核内を通過し、核膜から外に開く通路である「核膜孔」を通って細胞質に出てから、互いに結合して、蛋白合成能のある成熟リボソームになるとされます。

 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

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