中竹俊彦 リンパ球の世界(IV)-リンパ球形態の各部の意味(2007)-12.核小体とNOR

リンパ球の世界(IV)

 リンパ球形態の各部の意味

12.核小体とNOR

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 核小体は正常な細胞分裂や新規の物質産生でいったい何個の核小体が必要なのかという議論や考察は、これまでにはほとんど行われていないと思われます。今後、正常な核小体とNORの数についての認知や表現には、さらに十分な検討が必要と思われます。以下、私のこれまでの血液細胞学的な観察と考察とに基づいて述べます。

 正常な細胞について限定すると、その核小体の数を記述した解説では、多くの本で最大5個までみられるという記述が多いと思います。通常は核小体の数は5個以下です。その数は少なくなる方へ移行するように思わせる記述もあります。核小体は大きくなるほど個数が少ないのは、核小体が互いに「融合して大きくなる」という「移行像」を意味しているようです。それは細胞側に次のような理由があることと関係が深いように思われます。

 ヒトの細胞では、約200個に及ぶrRNA遺伝子が、5種類の染色体(13〜15、21、22番それぞれがペアーなので、合計10本)に分かれて乗っているとされます。赤芽球系を例にとると、前赤芽球は細胞分化のうえでは「ヘモグロビン」を多量に合成開始するスタートです。つまり前赤芽球という「特徴的な分岐点にある細胞」において、グロビン鎖をリボソームが合成するために前もってrRNAを準備するので、核小体の最大数が発揮されるとみてよいと思われます。

 それら分化の分岐点を通過した細胞は、核内の5か所の部位がRNAを合成して細胞分裂に向かいます。この場合には一斉にrRNAとして転写されるはずです。

 5種類の染色体の部位が、核小体形成体(nucleolar organizer regions:NOR)と呼ばれています。核小体形成体の位置は、染色体の模式図でみると、動原体の他にもう1つ短腕部にあるくびれた部分(短腕部のp12)に相当する位置に乗っています。

 具体的に染色体番号でいうと、13番〜15番では各々短腕部p12、および、21番短腕部p12、そして22番短腕部p12の5か所に存在します。これらの部分は染色体の模式図のうえでは、端部着糸形染色体の付随体柄(satellite stalk)と呼ばれる部分です。馴染み深い染色体の模式図でみると、その形がちょうど「こけし」人形の首の様にみえる細い部分に相当します。

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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