中竹俊彦 リンパ球の世界(IV)-リンパ球形態の各部の意味(2007)-15.リンパ球の核膜の分解と再構成

リンパ球の世界(IV)

 リンパ球形態の各部の意味

15.リンパ球の核膜の分解と再構成

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 細胞分裂に先立って、染色体へ紡錘糸が結合した段階で、それまで核を包んでいた核膜は小胞の状態に小分けされて核膜が分解されます。細胞質の2分裂で核膜成分も娘細胞には量的にも正確に2等分されます。細胞内にはこのとき滑面小胞体や粗面小胞体、その他の液胞など、核膜成分以外にも混在する小胞体は無数にあります。

 細胞分裂の後で整然と核の周りに核膜の再構成が遂行されるには、「核膜である」という選択を経て核のクロマチンに付着しなければならず、小胞体が合理的に行動を別々にとれる仕組みが必要だろうと思われます。

 成熟リンパ球はサイトカイン刺激や免疫学的な刺激で活性化され、刺激の性質とリンパ球の特性に伴って、ときには細胞分裂します。細胞分裂後には、それぞれのリンパ球がさらにリンパ芽球と同様に大型化して、核も細胞質も一段と大型の細胞になることがありうると思われます。その大型化の過程では、核膜成分と細胞膜成分とを再生産します。私たちが膜の合成機構とその異常を理解することは大切なことと考えますが、難しい分野です。

 細胞膜成分の合成、細胞内輸送と循環、再生産などの理解は難しい問題でここでは省略しますが、リンパ球が細胞内に産生したサイトカインを分泌できないように阻害する細胞内輸送阻害剤(ブレフェルディン)もあります。このような薬剤を使えば、リンパ球が新たに産生したサイトカインを細胞質に蓄積させ、リンパ球をグルタルアルデヒドで固定した後に膜の透過性を高めるための固定(前処理)を施してから、免疫学的に染めることはできます。

<次画面へ移行>

 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

入手方法の問い合わせ(nakatake@kdt.biglobe.ne.jp)半角アットマークで可能です。