中竹俊彦 リンパ球の世界(IV)-リンパ球形態の各部の意味(2007)-18.リンパ球の核周明庭(ゴルジ野)の発達

リンパ球の世界(IV)

リンパ球形態の各部の意味

18.リンパ球の核周明庭(ゴルジ野)の発達

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

  Bリンパ球の活性化に始まる活動では、リンパ球の核周明庭(ゴルジ野)の発達がめだつ場合があります。とくに形質細胞に分化してからは、核周明庭(ゴルジ装置)が発達して広くなります。また、形質細胞の細胞質の塩基好性部分は詳細に観察すると、微細な明るい斑点や線状の濃淡の縞模様が多く認められます。この細胞質の濃淡による縞模様の構造は、先に述べた普通染色では染色されないはずの粗面小胞体の微細構造が発達し広がったりして生じます。

 核周明庭はゴルジ装置に相当する領域の発達によって生じてくるものと考えられます。それらの微細構造の特徴的な変化は、普通染色では染まらず明るく抜けて、その存在が間接的にみえてくるのです。

 活性化リンパ球は、普通染色では確認できない液胞という微細な分泌小胞を形成します。稀には空胞様となって大型化したものが認められることがあります。空胞(vacuole)といっても、その中は細胞内で生じた液体とそれに溶けた産生物質(液胞)ですから、文字通りの「空間」ではありません。

 空胞(液胞)内には、膜の構成成分になるべき脂質の変性したものを含む場合もあるようです。細胞質の構造と空胞との関係は、その境界の屈折率が大きく異なるときは、光顕では極めて明瞭な封入体となって認められます。しかし境界が鮮明ではない場合もあるのは、空胞内(液胞)の成分が細胞質の密度と差がないか、細胞質構成成分(超微構造の一部分)の変性像の可能性があります。

 活性化されたリンパ球の種類が例えばT細胞系で、準備していたリボソームだけでインターロイキン類の糖蛋白の産生を終わるならば、ゴルジ装置の大きさもあまりめだたないと思われます。 

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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