中竹俊彦 リンパ球の世界(IV)-リンパ球形態の各部の意味(2007)-21.ウイルス感染症と異型リンパ球

リンパ球の世界(IV)

 リンパ球形態の各部の意味

21.ウイルス感染症と異型リンパ球

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 私たちにとって問題なのは、末梢血リンパ球の反応性変化すなわち、異型リンパ球の絶対数を指摘して、同時に、活性化状態がEBV感染を十分に暗示しているという情報を患者担当の医師に伝える責任があることです。

 情報が確実に伝わり、EBV感染を臨床的に抑制し治療するために、素早く対応して早期に短時間内で確定診断する必要性があれば、上記の方法は画期的です。

 とくに、骨髄移植その他の臓器移植に伴うウイルス感染症にとっては、極めて意義が大きいものです。血液検査担当者が形態学的に改めて異型リンパ球を認識し、観察力を厳しく鍛練して正確に情報を発信すると、骨髄移植の成否にかかわる情報を提供できることになるでしょう。

 ヘモグラムでリンパ球を詳細に観察すれば、反応性の変化は明らかになります。FCMを用いた上記の新技術の開発によって、ヘモグラムでのスクリーニングが確実ならば、より早い時期に、誰の血液で迅速に確定診断が必要なのかを明らかにできることを意味しています。

 以上、末梢血リンパ球の反応性とその変化を追って述べましたが、十分に伝えられたのか疑問が残る気がします。私はすでに、骨髄からリンパ球を追って、リンパ球の多様性を見抜く観察眼をもつ考え方、方法の解説書を年内に発行するつもりで6年前から準備中4)でした。

 この原稿は平成13年度の臨床検査自動化学会(横浜)のナイトセミナーに表題のような解説を依頼され、その準備としてしたためてきた資料がベースになっていますが、ここへ来て加筆しました。元の文面は東京都臨床衛生検査技師会の会誌へ、編集部からの要望で特別寄稿したものがあることをお断りしておきます。

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文献

1)中竹俊彦:骨髄像の解析と表現法(第1巻).(杏林大学保健学部臨床血液学研究室 電話042-691-0012(直通内線4305、4308)

2)葛島清隆:Epstein-Barr virus関連疾患におけるウイルス特異的CD8T細胞の動態解析.臨床血液41:487〜490、2000

3)葛島清隆:Infectious mononucleosisにおけるTリンパ球の諸性格.臨床血液42:458〜463、2001

4)中竹俊彦:骨髄像の解析法(第2巻)−リンパ球を追う−.(2002年12月頃発行の予定が、追記事項の挿入で2006年6月に発刊).

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

入手方法の問い合わせ(nakatake@kdt.biglobe.ne.jp)半角アットマークで可能です。