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HPV(Human papillomavirus)型の組織向性(tropism)が明らかに 筆頭・責任著者 大河戸 光章 (保健学部 臨床検査技術学科 准教授)

2023年09月04日

研究のハイライト

  • Human papillomavirus(HPV)にはtropismがあることが示されているが,明らかではない。
  • HPV検査陽性の女性の不安の軽減のためにtropismに基づいてHPV陽性結果を適切に解釈できるようになること,さらにtropismが悪性化との関連性を明らかにすることは重要な課題です。本研究の目的は,各HPV型の組織tropismを明確化することです。
  • 独自開発したuniplex E6/E7 PCR HPV法で多種のHPV型を高感度に検出したこと,子宮頸部と腟からの細胞診サンプルのHPV型検出結果から部位間の交差汚染を除外したことにより,HR型は子宮頸部に優先的に感染すること,LR型は腟に優先的に感染すること,pHR型は優先的な感染部位をもたないことを明確化しました。
  • 特定のHPV型の優先的な組織向性は悪性化の要因であることが証明されただけでなく,子宮頸がん検診におけるHPV検査の結果の理解がより一層進むこと期待されます。

研究概要

保健学部 臨床検査技術学科の大河戸 光章准教授を代表とする,金沢医科大学 産婦人科 笹川 寿之 教授,群馬パース大学 岡山 香里 准教授,保健学部 健康福祉学科 照屋浩司教授,こころとからだの元氣プラザ 婦人科 小田瑞恵部長,細胞診断部 石井保吉の共同研究チーム(保健学研究科博士前期課程 水野秀一を含む)は,多種のHPV(Human papillomavirus)*1を高感度に検出する独自のHPV検査法を用い, HR(high-risk)型, pHR(possible high-risk)型,LR(low-risk)型のHPVの組織向性または優先的な感染部位(tropism)*2を世界で初めて明確化しました。この研究成果により特定のHPV型のtropismは悪性化の要因であることが証明され,さらに子宮頸がん検診*3におけるHPV検査の結果の理解がより一層進むこと期待されます。なお,本研究はJSPS科研費(23K09676)の助成を受けて行われたもので,研究成果はInternational Journal of Molecular Sciences誌に,2023年8月24日に公開されました。

掲載URL:https://www.mdpi.com/1422-0067/24/17/13151

研究背景・目的

Human papillomavirus(HPV)による発がん能力の違いの1つはウイルスのE6/E7蛋白の機能的な違いであり,これに基づきHR型(16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68型),pHR型(26,30,34,53,66,67,69,70,73,82,85型),LR型(6,11,40,42,44,54,55,61,62,71,74,81,84,89,90型など)に分類できます。もう1つのメカニズムはHPVの組織tropismです。先行研究においてHR型は腟上皮より子宮頸部のtransformation zone*4に感染しやすいこと,pHRとLR型は子宮頸部より腟上皮に感染しやすいことが報告されています(図.1)。したがって,がんがHR型感染によってtransformation zoneに発症しやすいことを踏まえると,HR型がtransformation zoneを好むから,がんを発症しやすいのは自然です。一方で,先行研究のHPVの組織tropismが不明確であったため,子宮頸がんや前がん病変からpHRやLR型が検出されたり,腟がんからHR型が検出されたりした場合,HPV検査陽性の結果を解釈できず混乱を来します。HPV検査陽性という結果は,ウイルスが感染しているだけで,病変がないことも多々あります。したがってHPV検査陽性の女性の不安の軽減のためにtropismに基づいてHPV陽性結果を適切に解釈できるようになること,さらにtropismと悪性化との関連性を明らかにすることは重要な課題であるので,各HPV型の組織tropismを明確化することが本研究の目的です。

研究成果

本研究は,子宮頸部と腟からの擦過サンプルのHPV型検出結果から部位間の交差汚染を除外することにより,子宮頸部または腟に優先的に感染するHPV型を解析しました。その結果,HR型は子宮頸部に優先的に感染すること,LR型は腟に優先的に感染すること,pHR型は優先的な感染部位をもたないことを明確化しました(図.1)。我が共同研究チームの解析ポイントは2つあります。1つ目は独自開発したuniplex E6/E7 PCR HPV法(https://doi.org/10.1002/jmv.25017)で多種のHPV型を高感度に検出したこと,2つ目は各部位のHPV型検出結果に基づき,子宮頸部上皮細胞の腟への移動,腟上皮の子宮頸部への接触など,部位間の混在を除外したことです。これらが各HPV型のtropismの明確化に成功した理由です。

興味ある結果の1つはLR型が子宮頸部に優先的に感染した例が1例もないにもかかわらず,実際には子宮頸部擦過サンプルの約30%にはLR型が検出されることです。よって子宮頸がん検診のHPV検査で用いられる子宮頸部擦過サンプルの1/3は,腟からの混在した感染細胞が,検査結果に影響することが明らかになりました。さらにpHR型も同様の割合で混在していることを踏まえると,子宮頸がん検診においてHPV検査で陽性,細胞診検査で陰性(病変なし)には,LRまたはpHR型が子宮頸部を汚染した結果が含まれることが分かります。この研究成果により特定のHPV型の優先的な組織向性は悪性化の要因であることが証明されただけでなく,子宮頸がん検診におけるHPV検査の結果の理解がより一層進むこと期待されます。

掲載論文

発表雑誌名

International Journal of Molecular Sciences

論文タイトル

Preferential tissue sites of different cancer-risk groups of human papillomaviruses

著者

Mitsuaki Okodo 1*, Kaori Okayama 2, Toshiyuki Sasagawa 3, Koji Teruya 4, Rei Settsu 1, Shuichi Mizuno 1, Yasuyoshi Ishii 5 and Mizue Oda 6

著者(日本語表記)

大河戸 光章1* , 岡山 香里2 , 笹川 寿之3 , 照屋浩司4 , 摂津 黎1 , 水野 秀一1 ,石井保吉5, 小田 瑞恵6

*責任著者

所属

1. 杏林大学 保健学部 臨床検査技術学科,2. 群馬パース大学保健医療学部,3. 金沢医科大学 産婦人科,4. 杏林大学 保健学部 健康福祉学科,5.こころとからだの元氣プラザ 臨床検査部,6. こころとからだの元氣プラザ 産婦人科

用語の解説,注釈

*1 子宮頸部に感染したHPVは持続感染によって前がん病変を発症し,さらには浸潤がんへ進行する可能性があります。

*2組織向性とはウイルスが特定の部位を好んで感染することを指します。

*3 欧米の子宮頸がん検診の一次スクリーニングではHPV検査が行われ,HPV検査陽性者は次に精密検査をすべき女性をトリアージする目的で,細胞診検査が行われます。そして前がん病変や浸潤がんに由来した細胞が陽性の場合,精密検査が行われます。

*4 成熟女性は子宮頸部の粘膜は扁平上皮領域と円柱上皮領域からなり,両者の境界(squamocolumnar junction; SCJ)をtransformation zoneと呼び,子宮頸がんや前がん病変のほとんどはここから発生します。

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