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赤芽球の核形態を解析(その1)page2/2

4 核と細胞質のさまざまな異常を示した例

 骨髄穿刺の3日前に,B12への反応性を確かめる目的でB12が注射されていた症例である.赤芽球系も好中球系もすでにB12に反応して,形態が正常化に向かっている途中である.図2bは,もう一段階だけ幼若な核の印象が強い.二段階くらいの若い核と細胞質の成熟のずれがあったことが推定できる.B12投与後の3日間に,早いものは2回分裂し,急激な赤芽球増加と鉄欠乏による低色素性が反映されている.以上の観点からまとめると病的形態が説明できる.

図2a:塩基好性赤芽球(I)相当の核なのに細胞質は多染性
図2b::核の大きい多染性赤芽球は,多染性赤芽球が分裂したものでHbは少ない.
図2c:核形態の異常は赤芽球の名残である.
図2d:3個の多染性赤芽球は,核が粗造で,細胞質は狭い.鉄芽球性貧血の形態ではないのにHb量は少ない.

 ところで,悪性貧血は1)胃粘膜の萎縮のために鉄吸収不良もあり,全身的には鉄欠乏状態にある,2)無効造血のために,血清鉄や骨髄の鉄だけをみると鉄過剰にみえる側面がある,3)B12に対して反応することを確かめられる(造血剤に対する反応性),4)B12投与で赤芽球は一層増加するので鉄欠乏が表面化し.HBの回復が鈍化する.このため,一般病院で骨髄穿刺の前に臨床的にB12に対する反応性をみる処置を受けると,この症例のようになる.結果は鉄欠乏と低色素性赤芽球,巨赤芽球核形態異常およぴ巨赤血球,大赤芽球と大赤血球と巨大後骨髄球と巨大杆状核球など,多彩な形態所見が同一標本上で出現する.

 この例は感染症がきっかけで来院した.過分葉好中球は末梢血で認めたが,骨髄ではすでにみられなかった.しかし,巨大後骨髄球や巨大杆状核球を認めた.これらは細胞分裂能はなくB12には反応しないから,骨髄には認められたのである.巨大な好中球系にはいつかふれてみたい・・・

図2e:巨赤芽球,f:大赤芽球,f:低色素性赤芽球なども核形態異常と混在.
ここで読者の皆さんに,凝視して眼が点になるかもしれない疑問を1つ提供しよう.多染性赤芽球(I)までは分裂するが,核は濃縮した小型のまま大きくはならないのだろうか?赤芽球系ではDNAの倍加は小型化した核のなかで可能なのだろうか?つまり,DNA合成し,4Nにきちんと倍加して,整ってから分裂しているのだろうか?
文献
1)中竹俊彦,関根名里子:血液細抱の社会をのぞく(3)ー骨髄の赤芽球系を解析する− 医学検査43(5):前付,1994
出典
中竹俊彦,高橋 良,関根名里子:血液細胞の社会をのぞく(10)赤芽球の核形態を解析(その1).医学検査45巻 4号.