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ITPの巨核球を解析 page2/2

図4a,b 異常な巨核球

ITPで細胞質辺縁に空胞部分(a)を認めるが,特異的ではない.辺縁には粗大なPAS陽性(b)を示し,血小板産生異常の印象が強い.

図5 a,b,c,d 小型巨核球

小型の巨核球(a,b)は,PAS反応でも陽性像が明瞭にみえる(c,d).

図6a,b 異常な好酸球

著明な空胞変性は成熟過程での異常な活性化像らしい.これらが何を物語るのか説明できる情報をいまだに得ていない.

3 血小板数の回復の前兆

 前巨核球が増加し(症例A),顆粒密度が高く,成熟巨核球への移行(図3)がある.倍数性が大ならば,血小板産生数も多い.血小板サイズも大きいと思われる.

4 PAS染色所見

 巨核球はPAS反応強陽性である.ITPの巨核球ではPAS陽性顆粒の分布異常(図4b)も認められる.

 慢性型ITPでは,巨核球数は著明に増加しても,巨核球が小型のことがある(図5a,b).PAS染色でも小型巨核球は確認できる(図5c,d).1個当たりの血小板産生は極端に少ない.慢性型でなぜ倍数性が小さい成熟巨核球が増加するのか,説明できない.

5 好酸球の増加1)と変性像

 ITPに特異的ではないが,好酸球の増加と著明な空胞化,萎縮を伴う例がある.アレルギー性の変化とみられ,薬剤誘発型,反復型,慢性型によくみる所見である(図6a,b).

6 リンパ球の増加

 小児では元来,リンパ球数が多い.先行したウイルス感染による反応性のリンパ球や形質細胞増加も加わる.

7 好中球の中毒性顆粒

 上気道感染が最初はウイルス性だと,末梢血好中球が減少する時期がある.二次感染が伴うと好中球動員に変わる.骨髄は成熟好中球減少,後続の好中球系(後骨髄球や杆状核球)に中毒性顆粒が目立つことがある.

8 マクロフアージの貪食像

 貪食された細胞は血小板のほか,好中球,赤血球など2)ITPの比較的初期の変化としてみられる(図7a,b).

図7a,b マクロファージの貪食像

好酸球と赤血球(a)および好中球,血小板らしい貪食像(b)である.骨髄内でこれらの細胞処理が亢進している.

文献
1)H.ベーゲマン,J.ラステッター〔内野治人(監訳)〕:ハイルマイヤー改定新版臨床血液学アトラス.145,シュプリンガー・フェアラーク東京,東京,1989
2)中竹俊彦:骨髄像の解析と表現.第1巻,1993(出阪連絡先:杏林大学保健学部臨床血液学教室)
出典::中竹俊彦,高橋 良,関根名里子:血液細胞の社会をのぞく(5)ITPの巨核球系を解析する.医学検査43巻 7号.