お知らせ

脳卒中後の仮想現実リハビリテーションに関する論文が掲載されました

当教室が参加した共同研究の成果をまとめた学術論文が国際誌に掲載されました。

杏林大学医学部 大木紫教授、長岡洋平研究員(研究当時の所属は杏林大学大学院医学研究科大学院生)、鈴木伸弥講師、中島剛非常勤講師、林玲匡教授、昭和医科大学保健医療学部 大塚裕之講師、プロメテイ疼痛管理リハビリテーションセンター Max Ortiz-Catalan教授は、脳卒中の後遺症のある人を対象に、仮想現実技術(コンピューターで生成した人工の環境を使用者に体感させる技術)を利用したトレーニングの実行可能性や安全性を確認しました。

脳卒中を発症すると、手足に力が入りにくくなったり、手足の筋肉がこわばってしまう症状が高頻度にみられ、日常生活に支障をきたします。特に、発症してから半年から1年以上経った人では、一般的に、症状の回復のスピードが緩やかになるとされているため、このような人を対象にした効果的なリハビリテーション方法の開発が課題となっていました。
 
近年、仮想現実技術をリハビリテーションに応用する動きが高まっています。本研究では、筋電図(身体を動かそうとしたときに筋肉から出る微弱な電気信号を計測する方法)を使った仮想現実トレーニングが症状の改善に効果的ではないかと考え、当初は四肢切断後の幻肢痛治療用に開発されていた仮想現実装置に着目しました。この装置は、パソコン画面に仮想の身体(アバター)映像を表示し、身体の表面に貼ったセンサーからの筋肉の信号をもとに、アバターの動きをリアルタイムで操作するものです。仮にこの装置で筋肉の信号を読み取ることができれば、症状が中等度から重度の人でも、トレーニングを実施できる可能性があります。
 
そこで、本研究では、脳卒中発症後1年以上経過した2名にご協力いただき、実際のリハビリテーション場面で、本装置を使ったトレーニングを安全かつ長期間実施できるかどうか、そして、手の症状にどのような影響があるかを調べました。その結果、両者ともに、週2回の通常のリハビリテーション(歩行練習などの運動療法30分)に、手の仮想現実トレーニング(30分)を追加しても、一定期間(参加者A:8カ月間、参加者B:3カ月間)、安全に続けることができることが分かりました。さらに、2名中1名については、トレーニング期間後、腕や手の動きの改善がみられました。
 
本装置を実際のリハビリテーション場面で使うためには、まだ多くの課題が残っていますが、本研究成果は、その実現に向けた第一歩として今後の発展が期待できます。
 
本研究成果は、学術誌「Frontiers in Rehabilitation Sciences」に2026年9月23日にオンライン掲載されました。

実際のトレーニングの様子

研究に使用した装置は、身体の表面に貼ったセンサーで筋肉の微弱な信号を読み取り、仮想の手(パソコン画面の灰色の手)が動く仕組みになっています。参加者には、自らの意思で動きが不自由な手に力を入れ、仮想の手を操作する練習課題を実施してもらいました。

論文情報

論文名

Long-term electromyography-based virtual reality training for chronic upper-limb motor paralysis after stroke: an exploratory single-case experimental design

著者

Yohei Nagaoka*, Shinya Suzuki*, Tsuyoshi Nakajima, Hiroyuki Ohtsuka, Akimasa Hayashi, Max Ortiz-Catalan, Yukari Ohki(責任著者) (*: 共同筆頭著者)

(長岡 洋平、鈴木 伸弥、中島 剛、大塚 裕之、林 玲匡、Max Ortiz-Catalan、大木 紫)

掲載誌

Frontiers in Rehabilitation Sciences

掲載日

2026年9月23日

DOI

10.3389/fresc.2026.1946303

URL

https://doi.org/10.3389/fresc.2026.1946303

声明

本研究は、文部科学省/日本学術振興会 科学研究費助成事業(15K21754、25702033、26560282、24K14332)の助成を受けて実施されました。全ての著者において、開示すべき利益相反はありません。

2026年9月23日

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