研究紹介
膵胆道癌における腫瘍内不均一性の解明
膵胆道癌は、診断された時点ですでに進行していることが多く、現在でも治療が難しい癌の一つです。同じ膵胆道癌であっても、治療がよく効く患者さんもいれば、急速に進行する患者さんもいます。このような違いが生じる背景には、一つの腫瘍の中に性質の異なる癌細胞が混在していること、すなわち「腫瘍内不均一性」が関わっていると考えられています。これまでの研究により、膵胆道癌は遺伝子異常や分子発現の特徴に基づいて、いくつかのタイプに分類できることが明らかになってきました。一方で、実際の腫瘍組織の中で、どのような性質をもつ細胞集団が、どこに存在し、どのように癌の進展、浸潤、転移、治療抵抗性に関わっているのかについては、まだ十分に解明されていません。そこで私たちは、膵胆道癌の組織を病理学的に詳しく観察し、さらに遺伝子発現解析やエピゲノム解析などの分子解析を組み合わせることで、腫瘍内不均一性の実態を明らかにする研究を進めています。特に、癌組織内に存在する異なる細胞集団の特徴や、それらが腫瘍の悪性度、進展様式、予後とどのように関係するのかに注目しています。この研究を通じて、膵胆道癌がどのように多様な性質を獲得し、進行していくのかを理解することを目指しています。さらに将来的には、患者さん一人ひとりの腫瘍の特徴に応じた、より適切な診断や治療法の選択につなげていきたいと考えています。
研究機器:現在、いくつかの研究機器を導入中です。

身体認知の神経機構
私たちが上手に運動を行うためには、自分の身体を自分のものであると感じ(身体所有感)、運動を行ったのは自分自身であると感じる(運動主体感)必要があります。健康な人にとってはこれらは当たり前のことですが。しかし、脳卒中後の身体パラフレニアや四肢切断後の幻肢痛など、様々な病気でこれら自己の身体認知は障害され、その後の回復が上手くいかなくなるケースがあります。身体認知はその神経機構自体が、まだ不明な点が多い研究領域です。私たちは、身体認知の神経機構を脳科学で理解し、その知見に基づいた新しいニューロリハビリテーションを開発する研究を行っています。本プロジェクトでは、多チャンネル脳波や経頭蓋磁気刺激、Virtual Reality(VR)などの技術を用いて、身体認知の神経メカニズムの解明を目指しています。
研究機器:多チャンネル脳波装置、3次元動作解析装置、液晶シャッターゴーグル、ポリメイト、視触覚刺激装置、皮膚電気抵抗装置

脳・脊髄損傷後の運動回復を促進する治療法の開発
私達が運動を行うためには、脳からの運動指令が脊髄に届く必要があります。このための一番有名な経路が、錐体路と呼ばれる経路です。しかし、圧迫や外傷などにより錐体路が傷害されることがあり、運動機能低下や麻痺が引き起こされます。一方、動物実験(サル)では、脊髄で錐体路が傷害されても、介在ニューロンを介する経路が残っていれば、その後の運動回復が起こることが示されています。しかしながら、錐体路の発達した人間では、介在ニューロンの神経結合が比較的”弱い”と考えられています。そこで私達は、人工的に介在ニューロンの効率を高めることができれば効果的な運動回復が可能ではないかと考え、その具体的な方法論の開発を行っています。このため、運動解析、筋電図、経頭蓋磁気刺激などの手法を用いて研究を行っています。このプロジェクトは、杏林大学医学部整形外科学教室・病態生理学教室と共同で行っています。
研究機器:3次元動作解析装置、筋電図記録装置、経頭蓋磁気刺激装置、経頭蓋直流電流刺激装置、ニューロナビゲーションシステム、末梢神経・筋刺激装置

痛みの電気信号符号化メカニズム
触覚、温度感覚、痛み、痒みを伝える末梢神経は、多種多様に分化しています。これらの神経は、雑多な刺激(触る、つねる、熱、冷やす、発痛物質、虚血など)をどのように感知して信号化し、それぞれの感覚モダリティ(感覚の種類)を形成するのか?この生理学上の古典的問題に答えるため、「感覚神経 In Vivoパッチクランプ法」を独自に開発し、生体内外の刺激が電気信号へと符号化される機構を解析しています。
研究機器:麻酔下ラット標本からの感覚神経電気信号記録システム
