女性骨盤底専門外来では、女性の泌尿器科医師が診療を担当していますので、同性として率直にお悩みを相談できます。
女性の骨盤底疾患(骨盤臓器脱、尿失禁、過活動膀胱、間質性膀胱炎、女性性機能障害など)を専門的に診断・治療を行います。患者さんの状態、ご希望に応じて保存治療、薬物治療、手術治療を行います。保存治療では専門看護師による個別骨盤底筋訓練指導や骨盤臓器脱に対するリングペッサリーの自己着脱指導も行っています。骨盤臓器脱の手術治療では従来法に加えてメッシュを使用したTVM手術、腹腔鏡下仙骨固定術(LSC)、現在はロボット支援下腹腔鏡下仙骨固定術(RSC)も行っています。また腹圧性尿失禁に対する尿道スリング術(TVT手術、TOT手術)、過活動膀胱に対するボトックス膀胱内注入療法、間質性膀胱炎の膀胱水圧拡張術も行っています。
尿失禁症
尿失禁(尿漏れ)は自分の意志と関係なく、尿がもれてしまうことです。実際に悩んでいる患者さんはとても多いですが、恥ずかしさのために我慢している方が多い病気です。直接生命に関わることは少ないですが、生活の質(QOL: Quality of Life)を低下させます。女性に多い尿失禁には腹圧性尿失禁(咳やくしゃみをした時など、お腹に力がかかったときに尿が漏れてしまうタイプ)、切迫性尿失禁(急に尿がしたくなり、トイレに間に合わずに漏れてしまうタイプ)、腹圧性と切迫性の両方の症状がある場合の混合性尿失禁が多くを占めます。いずれのタイプにも骨盤底筋訓練は効果的で、当科では骨盤底筋訓練の個別指導を行っています。骨盤底筋訓練で改善が不十分な場合、腹圧性尿失禁では手術治療(尿道スリング術:TVT手術/TOT手術)が大変効果的です(手術時間は30分程度で2泊3日の入院期間です)。切迫性尿失禁(過活動膀胱)では薬物療法が効果的で、効果不十分の場合にはボトックス膀胱内注入療法を原則外来治療で行っています。いずれの尿失禁も治療により改善できることが多いですのでお困りの方は我慢せずご相談ください。
骨盤臓器脱
女性の骨盤の中にある膀胱、子宮、直腸などは、「骨盤底」といわれるハンモック状の筋肉や靱帯によって支えられています。これらの筋肉や靱帯がゆるむと、腹圧により骨盤内の臓器が押し出され、膣外まで膨隆します。膀胱により膣が膨隆することを膀胱瘤といい、子宮が膣外へ脱出することを子宮脱、直腸により膣が膨隆することを直腸瘤といいます。 症状としては陰部(膣)の違和感・異物感や頻尿、尿失禁、排尿困難、排便困難などがあります。
骨盤臓器脱の治療
軽症の場合には、症状を改善させ、進行を抑えることを目的として骨盤底筋訓練(ケーゲル体操)を行います。 また、ペッサリーという補助器具を腟内へ挿入することにより、膣が膨隆することを抑える方法もあります。ペッサリーにより腟内異物感が強くなったり、腟内に炎症を起こしたりすることがありえます。そのため当院では、膣内補助器を挿入したままにせずに就寝中は器具を外し、膣内に異物が挿入したままにならないよう、自己着脱指導を行っております。また、一般的なリングペッサリーでは合わない(外れてしまう、症状が残ってしまうなど)場合にはあらゆる形状のペッサリーも使用可能です。(リングペッサリー以外は自費診療になります)。手術は従来、緩くなって伸びた膣壁を縫い縮める手術(腟壁縫縮手術)を行っていましたが、術後再発する場合があります。そこで、メッシュ(シート状の人工材料で補強効果が高く再発を大きく予防します)を膀胱と膣の間、直腸と膣の間に挿入して緩くなった骨盤底筋を補強する手術(TVM 経腟メッシュ手術:メッシュを膣から挿入する術式)、ロボット支援下腹腔鏡下仙骨腟固定術(RSC:ロボット支援によりお腹の数か所の穴から、内視鏡的にメッシュを挿入・固定する術式)を行っています。患者さんの背景、脱の状態等により術式をご相談の上選択します。TVM手術は原則3泊4日、RSCは4泊5日の入院で行い、従来の手術よりも低侵襲で再発も少ないことが期待されています。※近年海外(特に欧米諸国)ではTVM手術の合併症が高いことから、メッシュ手術はRSC(またはLSC:腹腔鏡下仙骨膣固定術)が一般的となっていますが、日本での合併症は諸外国と比較してもかなり低く、侵襲性もRSC(またはLSC)より低いことからご納得頂いた患者さんにはTVM手術を行っています。詳しくはお尋ねください。