中竹 俊彦

リンパ球を追う(シリーズ000CD-ROM教材 その(2) 前駆形質細胞

リンパ球の世界(概観)

その(2) 前駆形質細胞

                        杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

CD-ROM画像2の「解説」 前駆形質細胞

 骨髄に到着した前駆形質細胞は骨髄の組織球に接着して「増殖の支持を受ける場」を確保します。骨髄には組織球に出会った前駆形質細胞が 1 個の組織球の周りに何個も並んでいる集合像が稀に観察できます。その接着に至る直前の前駆形質細胞は細胞質辺縁が複雑に盛り上がりや突起形成を示している像があり、行動に整合性のある形態変化と考えられます。

 リンパ球系の細胞分裂と分化は、リンパ節や骨髄の造血巣など似た様な細胞群が過密といえる状態の、むしろ酸素分圧が低い組織内での「微小環境」が必要と考えられます。

 そこへ回帰してくる帰巣性がリンパ球の分化における特性の 1 つと考えられます。

CD-ROM画像2の「詳細解説 1.リンパ球系の細胞質辺縁の突起形成

 リンパ球の細胞質の辺縁から突起が出ることは健常人の末梢血ではみられないものの、活性化されたリンパ球ではときにこの画像のような変形ないしは突起が出ます。これはリンパ球が活性化されて、運動性の亢進、さらには接着に必要な膜構造に変化を生じた所見と考えられます。

 免疫グロブリンが増加していく背景には、 B リンパ球系の活性化に続く IgM の産生亢進、形質細胞の増加へと移行していく状況が第1に考えられます。

 末梢血には特に乳幼児期に、軽度の感染症状があってもみられ、骨髄にこのような形態のリンパ球系が目立つときは慢性の感染刺激が強くなっていることが推察できます。

 最も多くみられるのは高齢者の慢性感染症か、高マクログロブリン血症への移行も考えられます。

 以上の様な、リンパ球への考え方、顕微鏡的な観察の手順、観察のポイント、観察内容の表現、解析と表現法などについては、拙著「テキスト」を御参照いただくと多様性についての対応が御理解いただけるものと思います。

<教材の御案内>

1.CD-ROMBlast Master /ブラストマスタ

2.テキスト骨髄像の解析と表現法(第2巻)−リンパ球を追う−」

 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

入手方法の問い合わせ(nakatake@kdt.biglobe.ne.jp)半角アットマークで可能です。