中竹 俊彦
リンパ球を追う(シリーズ000)CD-ROM教材 その(8) 骨髄のリンパ球
リンパ球の世界(概観)
その(8) 骨髄のリンパ球
杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦
CD-ROM画像8の「解説」 骨髄のリンパ球
骨髄のリンパ球としては、もっとも形態の特徴が少ない典型。核のクロマチン構造に何か動きがあったのか濃淡のコントラストが著明なこと、細胞質の塩基好性は弱く淡明で、それ以外には細胞の構造がほとんど認めらません。核の明るい部分が4か所もあり、核小体であるのか、または分散クロマチンなのかどうか疑問です。
核小体とみるには疑わしいとする理由は、クロマチンの層が厚い部分と点在する薄い部分、そして中央部のみ濃染しているのはクロマチン構造の活動性があるかどうかという観点から見て非常に不自然です。
中央部寄りに明るく核小体あるいは核小体形成前駆体として形成された状態のものであれば、クロマチンはもう少し全体的に微細に変化が伴うようです。
このリンパ球の粗大クロマチンが今後活動を開始するのか、それとも死んでいくのか判断の手がかりがなく、まさに休止状態の細胞と考えられます。
CD-ROM画像8の「詳細解説 1.クロマチンの粗大化」
クロマチンの粗大化(赤色矢印)は核の遺伝子の不活性状態を意味しますので、目算で約80%は機能していないとみられます。一部はさらに濃縮しています(黄色矢印)。しかし、明るい部分は分散クロマチンで活性化に必要な部分だとみれば、局部的に面積の約20%が機能していることになり、活動性の開始状態と判断されます(青色矢印)。
細胞質は核の面積に応じて十分に広く、したがって萎縮、変性はしていないと判断できます。
CD-ROM画像8の「詳細解説 2.クロマチンの粗大化と分散化の関係」
クロマチンは本来DNAであり、分裂・増殖中のリンパ球、あるいはたとえば幹細胞の段階ならば細胞分裂のたびごとに全DNAが整然と再合成されます。そして成熟リンパ球になれば粗大クロマチンの形に濃縮されており(粗大化)、活性化に関係した局部のクロマチンしか分散化しないはずです。
しかし、リンパ球の芽球化現象( blastic transformation )では、全てのリンパ球でとは言えないまでも特定のリンパ球は細胞分裂しますから、そこでは再び全てのクロマチンがDNA合成という仕組みで倍加します。すなわち、芽球と同様に変身する機会が生じます。
生体でのリンパ球芽球化は、全身のどこでも開始されるとしても、細胞分裂はリンパ組織に限定されると考えられます。生体の反応としての細胞分裂(反応性)は、正常な細胞の機能であり、間違った細胞分裂が起きても周辺の監視機構でチェックされ、「異常な細胞」に該当したときに標的細胞と認識し抹消する機構がリンパ組織に備わっているからです。
以上の様な、リンパ球への考え方、顕微鏡的な観察の手順、観察のポイント、観察内容の表現、解析と表現法などについては、拙著「テキスト」を御参照いただくと、多様性についての対応すべき方法が御理解いただけるものと思います。
・
体裁
B5版(本文 305頁)
目次(序論・1〜24まで9頁)
索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)
(頒布いたします)
入手方法の問い合わせ(nakatake@kdt.biglobe.ne.jp)半角アットマークで可能です。