中竹 俊彦

 リンパ球を追う(シリーズ100リンパ球の世界(I)-1-3.核小体保持の意義

リンパ球の世界(I)

  ‐リンパ球の核心に触れる‐

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

1−3.核小体保持の意義

 成熟したリンパ球は、細胞質に「機能発現に必要なリボソーム」をすでにある程度はもっているので、そのため淡い塩基好性です。したがって、インターロイキンなど刺激伝達物質としての微量のサイトカインを産生するには1個の核小体があれば、リボソームを構成するrRNA産生は十分ではないかと推定もでき、合理的と考えられます。

 特異的な刺激で核小体以外の場所の遺伝子(インターロイキン遺伝子)から、特定のILのmRNAが発現されてくれば、直ちに産物(特定のIL)ができると考えられます。

 一方、造血系のように、その後の「成熟過程に入る分化を決定」するような節目、すなわち骨髄芽球、前赤芽球、巨核芽球、前骨髄球、前駆形質細胞(旧来の呼称では、形質芽球)など「分化の決定段階」においては、好中球は一次顆粒内の加水分解酵素、赤血球はヘモグロビン、形質細胞は免疫グロブリンなどの分化・成熟における「特異的な機能性」が明らかで、しかも塩基好性の強さを反映して「多量の蛋白」を産生するようになります。  

 このような多量の蛋白合成に向かうときは、前赤芽球や形質細胞に見られるように、細胞質が「強い塩基好性(濃青色」すなわち「多量のリボソーム」を必要とするために、最大数の核小体とその融合体が大型化して準備されると考えられます。骨髄芽球・前骨髄球は核小体が融合して大型化することが明らかにされています。

 しかし、末梢血のリンパ球はなぜ小型で、核小体が1個なのかという疑問に到達します。これは標本を見た皆さんが抱く、リンパ球の核にある「小型で1個の核小体」の存在の意義は?という疑問と同じです。

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 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

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