中竹 俊彦
リンパ球を追う(シリーズ100)リンパ球の世界(I)-1-5.1個の核小体の機能
リンパ球の世界(I)
‐リンパ球の核心に触れる‐
杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦
1−5.1個の核小体の機能
1個の核小体が準備されているとき、その大きさが問題になります。
すべての核小体が活性化されて融合した後の核小体1個は、それなりに大型の核小体でしょう。しかし、産生すべき物質の量が特定・かつ少量のサイトカイン(限定されたILのように)制限されているのならば、リボソームの準備量も少なくてよいわけで、小型の核小体が1個の機能で済むという解釈ができます。
核小体形成のための情報成分(遺伝子)は、5組の染色体(13番〜15番、21、22番)に存在します。しかし、一組の染色体上に核小体1個分の全てそろった情報が均等に分割されて乗っているのかどうか、その証拠を私は未だ知りません。
ウイルス感染においては、活性化Tリンパ球が到着する以前に、自然に備わっている細胞傷害機能をもち「条件付け」が必要ではない「NK細胞」が最初に活性化されます。これらも活性化されたリンパ球のはずで、1個の核小体が見えます。
したがって「顆粒リンパ球の活性化」が早期に発生します。続いて、末梢血から組織へ出て適切な抗原情報を受けたTリンパ球が刺激されると、Tリンパ球は活性化されIL類を産生します。この場合も少なくとも1個の核小体はあり、ときにはかなり大きい核小体もあります。
一部のTリンパ球は活性化されつつリンパ節へ移動し、周囲の細胞を活性化します。そのためリンパ節が肥大します。この過程で必要に応じて、核小体は複数が形成されると考えられます。
こうして末梢組織で活性化されたリンパ球は粘膜、皮膚からリンパ節を経由し末梢血への進入も起きてきます。血液(血流)は、リンパ球の移動において最も迅速に、全身に展開できる通路だろうと考えられます。
これが背景となって、顆粒リンパ球(NK細胞)やTリンパ球は「活性化リンパ球」となって、頻繁に認められます。ときには、Bリンパ球が活性化されたとみるべき形質細胞様の活性化リンパ球(lymphoplasmacytoid cell;リンパ形質細胞様細胞、または形質細胞への分化を経てきたのならば前駆形質細胞)に核小体が認められるのも当然と思われます。
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体裁
B5版(本文 305頁)
目次(序論・1〜24まで9頁)
索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)
(頒布いたします)
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