中竹俊彦

リンパ球を追う(シリーズ300-B)リンパ球の世界(3-B) リンパ球をどうみるか2.末梢血リンパ球の特性

リンパ球の世界(3-B

 リンパ球をどうみるか‐リンパ球の質的・量的な反応性変化‐

2.末梢血リンパ球の特性

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 健康人末梢血のリンパ球の特性は、先ず血中に出る前に胸腺、骨髄またはリンパ節などで前段階の母細胞が細胞分裂した結果生じた娘細胞です。娘細胞は分裂後の厳重なチェックを受けた後、正常な新生リンパ球として血中に入るので、新生リンパ球はその全てが正常な、基本的な形態のリンパ球の姿であると考えられます。新生リンパ球はリンパ液の流れの本幹(胸管)を経て、左鎖骨下の静脈に流入するとされています。

 私たちが「血中に入ってきた新生リンパ球」として捉えやすい対象は、感染症状のない(感染がないわけではない)新生児や乳児の末梢血直接塗抹標本に多くみられます。もちろん成人にもあるのでしょうが、再循環リンパ球が多いと推定されます。

 新生児から乳児期には旺盛な新生リンパ球産生があるので、絶対数が多いという意味ですが、以下に述べる刺激を受け、反応性変化を示しているリンパ球も当然多いと理解されます。

 新生リンパ球とは具体的には、成人のリンパ球よりも若い印象のリンパ球群をみれば察しがつくでしょう。初学者が成人のリンパ球に慣れてから新生児や乳児期のリンパ球を見ると、いかにも若いと思われるリンパ球が多くて、戸惑いを感じるのが普通です。

 新生リンパ球は健常人の血液中で生じているさまざまなサイトカイン刺激にはもちろん、リンパ球にとって意味のある体内全ての免疫学的な刺激に対して個々に認識、あるいは受容した場合には、リンパ球の細胞内に刺激が発生して刺激伝達系を経て伝わり、細胞内の各部がこれに応答(あるいは、反応)するでしょう。刺激を受容するリンパ球の細胞膜面の部位は、一般には受容体(レセプター)ですが、リンパ球にとって意味のある「刺激」の受容体は抗原受容体、サイトカイン受容体、ホルモン受容体、補体受容体、化学的受容体など多種類が存在する、と私たちは考えておく必要があります。

 末梢血に入った新生リンパ球の多くは、血流中から再び組織(皮膚、諸々の組織、リンパ節およびリンパ管)に入り、リンパ節では樹状細胞(抗原提示細胞)から抗原提示(情報)を得て、認識し、それが細胞内では刺激となって、細胞が活性化されます。

 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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