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ITPの巨核球を解析 page1/2

1 ITPと巨核球系の関係
2 幼若な巨核球が多い理由
3 血小板数の回復の前兆
4 PAS染色所見
5 好酸球の増加と変性像
6 リンパ球の増加
7 好中球の中毒性顆粒
8 マクロフアージの貪食像

 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)では血小板自己抗体や免疫複合体が血小板に結合して,血小板寿命が著明に短縮する.その結果,血小板は急激な消耗で減少し,毛細血管透過性が亢進し,紫斑が出現する.

 骨髄巨核球数は正常かむしろ著増し,100〜250/マイクロリットルである.早期診断例や,巨核球系が未熟で小型(核の倍数性が小)のときは算定しにくい.そこで骨髄像では慎重な形態観察が必要である.

 巨核球系の形態学的変化や骨髄像からITPをどう把握すべきか,解析してみよう.

表 ITPの巨核球の成績例
NCC MegC M-Bl(%) P-M(%) M(%) M-N(%)
基準値 18.5 <150 <10 10 70 10
Case A 11.7 234 29 54 15 20
Case B 13.4 140 35 23 19 23
Case C 17.5 140 34 25 20 21
Case D 11.7 109 68 22 4 6

NCC:有核細胞数(万/マイクロリットル),MegC:巨核球数(個/マイクロリットル),M-Bl:巨核芽球,P-M:前巨核球,M:巨核球,M-N:裸核巨核球,ピンク:最大占有群

1 ITPと巨核球系の関係

 巨核球系の実数と成熟度が症例ごとに異なるのは,発症速度や骨髄穿刺までの経過日数の関係である().

 巨核球数正常の例(症例D)は,発症が急激なため臨床診断が早く,骨髄穿刺まで短期間の例と思われる.巨核球系が小型,幼若で血球計算版で算定しにくいのが通例で,標本上の巨核芽球の鑑別が大切である(図1a,b,図2).

 巨核球系は分化,増殖が刺激され,芽球から約11日後には血小板が産生可能(図3).

図1a,b 巨核芽球様細胞

倍数性4Nでは骨髄芽球と鑑別不能.

2 幼若な巨核球が多い理由

 ITPでは血小板消費に反応して血小板産生も亢進すると解釈されるが.標本上では血小板産生像は少なく,幼若な巨核球の比率が多い.この幼若巨核球が多い現象は,どう解釈できるだろうか? ITPの発症から2週間以内と仮定したとき,初期には巨核芽球数が増加し,倍数性が増大しつつある.前巨核球までが実数で増加してくる(症例D).その一方で,発症時までに巨核芽球,前巨核球だったものは,発症1〜2週間以内に血小板産生を終了して裸核になり,巨核球系の分類で成熟巨核球が減少する.巨核球の形態異常(図4a)もみられ,幼若型の増加と合わせて,巨核球の成熟抑制との考え方もあるが,全体像からはITPの発症初期で血小板産生亢進に至る前の状態と思われる(症例B,C).

図2 巨核芽球

芽球が8Nでも細胞質が狭いと,右の前骨髄球と同大で,核に注目しないと直接算定では算入しにくい.

図3 十分に成熟した巨核球

倍数性,顆粒密度とも大.血小板分離も可能で,この成熟レベルが増加すれば回復期.