先進医療 「アキシチニブ単剤投与療法 胆道がん」に関するお知らせ 2

作成日時:2017年09月22日

 厚生労働省の承認を受けて実施中の上記臨床研究において、病状の進行のため治療を中止した後、早期に亡くなる事例があり、研究事務局では薬剤との関連も否定できないと判断して、第三者の専門家からなる効果安全性評価委員会に審議を依頼しました。
 (2017.8.30 本学医学部付属病院ホームページ等掲載)
 この審議結果がまとまり、委員会は死因は原病(胆道がん)の進行によるものと判断し、患者さんの新規登録を含め計画を継続することは適当とする見解を示しました。
これを受けて学内の医学部倫理委員会で改めて審議し、まず、試験治療を現在も行なっている患者さんのみを対象に、実施計画等に改善を加えた上で研究を継続することを承認しました。患者さんの新規登録などの点については引き続き検討していく方針です。

 この先進医療は、すでに一部のがんへの抗がん剤として承認されているアキシチニブを、進行した胆道がんに投与する臨床研究として2016年5月に厚生労働省の承認を受けました。この場合の進行した胆道がんとは、手術療法が不可能であり、なおかつ従来認められている抗がん剤療法でも効果がみられない状況を言い、この先進医療の内容を充分にご説明した上で同意された患者さんを対象としました。
 2016年7月から患者さんの登録を開始し、2017年8月10日までに19名が登録され、投与による治療が実施されています。このうち4名について、病状が進行したため治療を中止したあと30日以内の早期に亡くなりましたが、特にそのうちの3名については急激な腹水の増加があり、研究事務局では治療中止後の早期死亡と薬剤投与の関連が否定できないと判断いたしました。このため8月11日をもって一旦新たな患者さんの登録を中止するとともに、効果安全性評価委員会に原因の解明等について検討と審議を求めていました。
 試験治療を継続していた患者さんについては再度ご意向を確認して治療を継続しています。

 効果安全性評価委員会は、9月1日改めて厳密な検討と審議を行ない、問題の3例については、死亡の原因は原病(胆道がん)の進行によるものと判断しました。
その根拠として委員会は、腹水増加の経過が病状の進行と矛盾しない速さであることや、腹水からがん細胞が検出されていることなどをあげています。ただし、1例については、死因は原病の進行と判断されるものの、腹水の増加については予測できる速さを越えていることから、試験治療との因果関係が否定できないとしています。
 委員会は、これらの点を踏まえた上で、「進行した胆道がんのための新薬の開発は意義のある重要な課題であり、研究の実施計画書の改定を行ない、新規登録を含め計画を継続することが適当とする」とする見解を示しました。また、あわせて
1.原病の進行が認められた場合は投与による試験治療を中止すること。
2.試験治療の有効性と安全性をより正確に判断するため、患者の選択基準をより厳しくすること。
3.試験治療の中止後、少なくとも1ヵ月は治療を実施した医療機関で経過をみること。
などの点を指摘しました。

 これを受けて研究事務局では、原病の進行が認められた場合、試験治療を中止することなどを実施計画書と説明文書に新たに盛り込み、まず、現在も試験治療を行なっている患者さんに限定して研究を継続する方針を決めました。

 学内の医学部倫理委員会も、9月11日に改めてこの問題を審議し、研究事務局のこの方針を承認し、当面は、試験治療中の患者さんのみを対象に研究の継続を許可しました。
 また、厚生労働省の先進医療技術部会も9月14日、これを承認しました。

 効果安全性評価委員会が見解で示した、患者さんの新規登録を含めた研究の継続については、引き続き検討を進めていく方針です。

以上
杏林大学医学部付属病院長 岩下 光利
  杏林大学医学部長     渡邊  卓