病院・診療科について麻酔科 萬知子教授がIARSでKosaka awardsを受賞
作成日時 2012年05月29日

麻酔科の萬知子教授が平成24年5月18日(火)~21日(月)に米国マサチューセッツ州のボストンで開催されたInternational Anesthesia Reseach Society(以降IARS)でKosaka awardsを受賞しました。
IARSは日本臨床麻酔学会と姉妹関係にある、米国では2番目に大きな麻酔科学会で、米国内のみならず世界中から麻酔科医が参加します。
萬教授が同学会で発表した演題は「USEFULNESS OF ULTRASOUND GUIDED CENTRAL VENOUS INSERTION IS DEPENDENT ON DIFFERENT CLINICAL EXPERIENCES(エコーを使用した中心静脈カテーテル挿入の有用性は、臨床経験の違いによって左右される)」というもので、3年間の中心静脈カテーテル挿入観察シートの集計に基づいた後ろ向き観察研究の結果をまとめたものです。
萬教授は、医師の臨床経験年数(資格別)によって、研修医・中堅・ベテランの3つのグループに分け、中心静脈穿刺時のエコーを使用した際の機械的合併症減少への影響を調べました。その結果、中堅の医師グループがエコーを使用すると合併症は減る傾向にありましたが、ベテランのグループではエコー使用により合併症は増加し、研修医のグループの結果は年によってまちまちでした。こうした結果を受け萬教授は「エコーガイド下中心静脈穿刺は十分なトレーニングを行った上で施行しないと機械的合併症は減らすことはできないため、啓発活動が重要かつ緊急課題である」と発表し、その警鐘的な意義が高く評価されました。
萬教授が受賞したKosaka awardsは、岡山大学麻酔蘇生学講座初代教授の故小坂二見氏が日本と世界の研究者の交流促進のために設立した賞で、IARSの発表の中から6名の候補者(日本人3名、日本人以外3名)が選ばれ、臨床研究1名、基礎研究1名に授与されるもので、萬教授は臨床研究部門で受賞者に選ばれました。
萬教授は「当院のCVC委員会での活動の証として、中心静脈カテーテル挿入時の合併症について観察シートの集計結果をまとめ、3年ほど前から学会で発表を行っています。当初は、『エコーガイド下中心静脈穿刺は慣れない医師でも簡単、安全』という論文が世界中に多々ありましたが、当院の臨床現場ではエコーが正しく使用されていないことが多く、またその場合に合併症がむしろ増えるという結果が観察シートの集計結果でも明らかでした。そのため、警鐘を鳴らすためにも、院内外で積極的に発表活動を行うことにしました。学会で発表を行うと聴衆者の生の意見が聞けるので、日本のみならず世界の臨床現場の現状、人々の意識の変化が肌で感じられ、大変有意義だと感じています」と学会で発表することの意義を語りました。そして、「Kosaka awardsにノミネートされただけでも驚きと感激でしたが、受賞でき大変うれしいです。常日頃お忙しい中、CVC合併症防止のためにご尽力いただいている脳神経外科の塩川芳昭先生のご指導、観察シートの膨大なデータの集計を行って頂いている医療安全管理部の加藤真人さんをはじめCVC委員会のみなさんの御蔭です」と受賞の喜びを話しています。
