病院・診療科について当院泌尿器科に前立腺がんの最新医療用手術ロボットを導入

作成日時 2012年06月12日


 当院では、前立腺がんに大きな成果を挙げている医療用手術ロボット「da Vinci Surgical System(ダ・ヴィンチ・サージカル・システム)」を早ければ6月末にも導入することになりました。
 このロボットは、アメリカのIntuitive Surgical社が開発した手術支援ロボットシステムで、カメラの付いたアームと3つの操作アーム(鉗子)を持つロボット部、外科医が実際の操作を行うコックピット、内視鏡画像を映し出すモニターの3つのパーツで構成されています。術者が腹腔内をカメラモニターで観察しながら、コクピットで手元のレバーを操作すると、その操作したままの手の動きがロボットの手の動きとして忠実に再現されるというものです。
 ロボットアームには7つの関節が付いており、回転と開閉しか行えない腹腔鏡下手術の道具とは異なり、もっと細かい人間の手首と同様の自由な手術操作が可能になりました。また、内視鏡画像を映し出すモニターはタッチ画面になっており、すべての手術スタッフが情報を共有することが出来るほか、タッチ画面に書き込むことで他の手術スタッフから術者にアドバイスを出すことも出来る画期的なシステムになっています。



 この手術ロボットを導入するメリットとしては、従来の開腹手術と比較して小さな腹部切開で手術が可能なため出血量が少量で済むほか、鮮明な3Dの内視鏡画像を見ながらの手術が可能なため通常の腹腔鏡下手術と比較すると安全で確実な手術が行えることが挙げられます。

 欧米では、すでに10年以上前から実際の手術に導入されており、アメリカにおいては前立腺手術の80%以上がこのロボット手術で行われています。国内では、2009年11月に薬事承認を受け、現在では約40台が稼動しており、急速に導入が進んできています。
 現在、保険の適用対象となるのは前立腺がんのみで(2012年4月より適用)、他の手術では自費診療となっていますが、消化器一般外科・呼吸器外科・婦人科領域でも利用可能な機器であるため、今後保険対象手術が増加することが期待されます。
 治療を始めるにあたっては、スタッフが先行して導入した特定の医療機関のトレーニングセンターで十分な臨床実地研修を受けることが義務付けられており、当院で実際に稼働するのは早くて6月下旬頃になりそうです。

 本装置の導入にあたって泌尿器科の奴田原紀久雄教授は「この装置の特徴は、3Dの拡大内視鏡が術者の眼の代わりとなり、様々な動きのできる器械の手が術者の手の代わりとなり手術を行っていくことです。これにより肉眼では認識が難しかった、正常組織と病変部の境界をより正確に認識し、健常な組織を傷つけることなく癌を残らず取りきる、低侵襲で根治性の高い手術を提供できるようになりました。この手術を導入するに当たって、数多くの長時間にわたるトレーニングを各スタッフは行い、安全性を高めています。この機器の導入が真に患者さんの予後の改善と副作用の軽減を果たすことにつながるように、日夜努力研鑽をして参ります」と話しています。