研究・社会活動
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研究協力情報・テーマ
国際医療協力プロジェクトに参加して:ケニア国感染症研究対策プロジェクト
医学部感染症学講座 田口晴彦
日本政府が発展途上国に対して援助を行う政府開発援助 (Official Development Assistance: ODA)の一つに、「ケニア国感染症研究対 策プロジェクト」があります。
このプロジェクトは、「HIV/AIDS」、「日和見感染症」、「ウイルス性肝 炎」の3つのプログラムに関して日本より専門家を派遣し、その研究 と対策を支援するものです。
その内、「日和見感染症」プログラムは、本学医学部感染症学講座神谷 茂教授が国内委員をなされており活発な活動と交流が執行されています。
今回、私は感染症専門家として派遣される機会を得ましたので、その報告をいたします。

現在、当該プログラムは、Mbagathi District Hospital(州立病院)、Cottolengo Orphanage(HIV陽性の孤児を入院させている)およびSt. Bernado Orphanage(HIV陰性の孤児を入院させている)、西ケニアKenya Medical Research Instituteを拠点に日和見感染症の診断および研究対策を進めており、特にMbagathi District Hospitalへの支援は ベルギーのMSF(国境無き医師団)と共同で行っています。
実際に病院や孤児院をコホートとし研究を行い、そのデータを現場医療にフィードバックするものです。
したがって、地域社会またKenya国民への直接的裨益度の高いプログラムであると言えます。
一方で、実際的には臨床医療指導・検査レベルの確保・医療システムの確立・倫理の確立・社会医療従事者の教育など、multidisciplinaryなプログラムであることも事実です。

この「日和見感染症」プログラムを医学部4年生の松橋徹郎君(写真右端)と高田彰憲君(写真左より3人目)が、8月15日より20日の間、見学研修を行いました。
異文化に接し、そしてODAやNGOの活動を学び、さらには非常に重篤なHIV/AIDS患者さんや様々な感染症の患者さんに接することで、医学生として大きな勉強になったものと確信しています。
国際的な視点を持って医療現場を支える医師の教育が注目されて久しいですが、今回の見学研修を終え、机の上だけでは学び得ない無形の宝(心)を得てくれたものと期待しています。

11月にはケニアからMs. Muita Lucy Florence Wangui(検査技師)さんが4ヶ月間、また来年1月からはMs. Christine Bii Chemutai(研究者)さんが1年半の間、医学部感染症学講座で研修をされます。
現地で邦人専門家が医療と研究を指導し、現地スタッフを日本に招いて研修を行うシステムが繰り返されています。

国際医療協力は即座に結果の出る性質のものは少なく、地道ではあるが柔軟性ある対応と洞察力の下に成功し得るものだと考えます。
また、医療に関する専門性だけではなく、その根本には文化やヒトの価値観を尊重できる人間性が無くてはできないものだとも思っています。
今後、多くの学生諸君が国際医療協力の現場を学ぶ機会が増え、また、杏林大学が多くの国際貢献ができることを期待しています。

日和見感染症:
先天性あるいは後天性免疫不全症、白血病、がんの罹患、放射線被曝などにより生体の抵抗力が減弱した場合に、従来は病原性が弱く正常なヒトでは感染を起こさないような微生物に感染して発症することをいいます。
特にアフリカ諸国ではHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染してAIDS(後天性免疫不全症候群)となる場合が多く、免疫能の低下に伴い、カンジダ(真菌)、ニューモシスチス・カリーニ(真菌)、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、HHV-8(ヒトヘルペスウイルス)などの微生物に感染し重症化してしまいます。
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