中竹 俊彦

リンパ球を追う(シリーズ000CD-ROM教材 その(6)形質細胞の集合(骨髄の)

リンパ球の世界(概観)

その(6) 形質細胞の集合(骨髄の)

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

CD-ROM画像6の「解説」 形質細胞の集合

 8個の形質細胞が集合したように見えます。このような房状の細胞集団をクラスター( cluster )と呼ぶ例があります。

 正常な骨髄造血細胞では赤芽球島が代表的な細胞の配列ですが、病的な例ではこのように、また多発性骨髄腫の症例では非常に頻繁に、しかも標本の各所に散発的に観察されます。集合した細胞数は4個程度から数十個に及ぶこともありますが、赤芽球島では30個以下(平均22個という程度)の例が多いのに比べると、形質細胞集団の意味が別にあると考えなければなりません(その意味については、詳細解説参照)。

CD-ROM画像6の「詳細解説 1.形質細胞のクラスターの意味

 形質細胞は本来、骨髄の組織球に接着して形質細胞へ分化・成熟する特性があります。しかし、正常な骨髄ではそのクラスターを観察できることは非常にまれです。あっても成熟型の形質細胞の集団であって、つまり正常な所見です。

CD-ROM画像6の「詳細解説 2.幼若な形質細胞の集団は異常

 幼若な形質細胞の集団は、異常な所見の一つです。ときには集団の中心には組織球が存在して、あたかも「赤芽球小島」と似ている集団ですが、集団の細胞が異常な形質細胞であることが病的な証拠です。

 これと同様な集団が、別掲のマクログロブリン血症の症例にもありますが、そこではまた異なった「リンパ形質細胞様細胞( lymphoplasmacytoid cell )」の集団で、細胞の多くがむしろリンパ球の形態に近似しています。

CD-ROM画像6の「詳細解説 3.集団を形成する背景

 形質細胞が腫瘍化した、いわゆる多発性骨髄腫の標本には、「前駆形質細胞(リンパ球様形質細胞:lymphoplasmacytoid cell )」から形質細胞に至る間の様々な段階にある例まで見ることができます。細胞構成も若い細胞構造から成熟型までにわたる場合があり得ます。細胞どうしの間に相互依存関係があるためです。

CD-ROM画像6の「詳細解説 4.形質細胞の腫瘍化と依存関係

 骨髄腫細胞は IL - 6 を産生しているという点で特殊です。しかも、自己産生 IL - 6 にまた刺激を受けて増殖機構を誘発され、自己で分泌した因子によって増殖を続ける特性をオートクライン( autocrine )増殖と名付けられています。これに対して正常なときのように、組織球が産生してくれた増殖因子や他の細胞由来の増殖因子に依存することは傍分泌:パラクライン( paracrine )増殖と呼ばれています。

CD-ROM画像6の「詳細解説 5.骨髄腫と破骨細胞の依存関係

 骨髄腫細胞集団が産生するIL - 6は、自己増殖に好都合なだけではなく、破骨細胞( osteoclast )に対しても強い活性化と増殖刺激になります。これが、骨髄腫症例の骨のレントゲン写真では「打ち抜き像」をきたす原因になります。

 以上の様な、リンパ球への考え方、顕微鏡的な観察の手順、観察のポイント、観察内容の表現、解析と表現法などについては、拙著「テキスト」を御参照いただくと多様性についての対応が御理解いただけるものと思います。

 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

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