リンパ球の世界(3‐A)
A. リンパ球とはどういう細胞か
3.リンパ球の何が問題になるのか
杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦
リンパ球の何が問題になるのでしょうか。リンパ球は一般には、何らかの刺激としてリンパ球の多様な性質の内の1つが、受容体を介して受けた刺激に応答する運命の細胞でしょう。
刺激に反応しているときの形態は、これまでのところ「異型リンパ球の数値」だけが報告されています。けれども、異型リンパ球の定義は、一言では表現できません。異型リンパ球の観察もまた形態学的には表現と定義が、観察者にとってはすでに経験されたように、どこがどう問題なのか、判断は容易ではないのです。
したがって、定義が困難なだけに、異型リンパ球の判定・鑑別が難しいと言われます。そのうえ、リンパ球の特性ともいえるサブクラスの違い、新生リンパ球と再循環リンパ球の違い、リンパ球個々の形態の微妙な違い、ときにはリンパ球の大小不同(現在では、ほとんど論議されない)などの反応性変化の様子は、特定の症例は別としても明解な情報にはなりにくく、利用されていないのが現状です。
しかし、リンパ球の大小不同などは、本当に情報にはならないのでしょうか?
もう一つの背景(基盤、判断条件あるいは土台など、前提となるもの)として、ただ1回の検査結果だけでリンパ球の動き(動態)を見極めることはできません。少なくとも2点、あるいは3点の時間軸で数値や形態の変化を読み取る必要があります。
リンパ球に関するある時点の数値が得られたとして、それは今後そのレベルで推移・経過していくのか、あるいは増加していくのか、それとも減少するのかを検査で明らかにしたいときは時間軸が問題になるからです。
一方、仮にリンパ球絶対数が予想(具体的にあるとすれば、基準値)よりも少なかった場合に、減少したそのレベルが持続するのか、元のレベルへ回復するのか、あるいは一層減少していくのかと考えながら検査していく姿勢や考え方が大切なように思います。
そこで、リンパ球をどうみるか ‐反応性リンパ球の質と量の異常‐ と題して、次の事項などと関連づけて、このシリーズでは見方・考え方を整理してみます。
*刺激と応答の関係
*機能の高まり(活性化)とは
*標的(細胞のある)場所への移動
*機能発揮(機能と標的、ないしは効果の関係)
*数が増える理由、減少する理由
*絶対数
*好中球や単球の反応性変化と密接に連動
*産生母地(胸腺、リンパ節など)
*リンパ管、血管の反応
*リンパ球サブクラスと機能の分担
*血中に流入する新生リンパ球、再循環リンパ球
*異型リンパ球の定義
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体裁
B5版(本文 305頁)
目次(序論・1〜24まで9頁)
索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)
(頒布いたします)
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