中竹俊彦 リンパ球を追う(シリーズ300-B)リンパ球の世界(III-B) リンパ球をどうみるか‐4.刺激応答と形態変化 自問自答 1)大きさの違いへの疑問と説明 2)細胞質の広さの違いへの疑問と説明 3)塩基好性の増強への疑問と説明 4)核の大きさ(または、クロマチン量)の増大への疑問と説明

リンパ球の世界(III‐B)

 B.リンパ球をどうみるか

4.リンパ球の刺激応答と形態変化

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

4−1)大きさの違いへの疑問と説明

 自問自答

 (1)リンパ球にとっては、直径が10μmの違いが本当に無意味なのだろうか?

 この疑問に答える事実は従来のテキストに大・中・小リンパ球の意義が記述されていないので、これが私の疑問の始まりです。皆様は上記の疑問に対してどういう説明を準備なさいますか?

 私は、このような萎縮型から大型化を示唆するともいえる幅が「活性化リンパ球から疲弊リンパ球まで(機能発揮後のくたびれたサイズ)を含む」と理解しています。塩基好性がより強く、しかもこれより大きくなっていくのは「異型リンパ球」として別に扱うのは、御承知のように従来からの血液形態学です。

 

4−2)細胞質の広さの違いへの疑問と説明

 さらに、細胞質の広さは、大型のリンパ球では広いものが多いものの、小型のリンパ球では細胞質が狭くてほとんどみえず裸核に近いものまで、ここでも多様です。定型的な広さという考え方には意味がないようにも思われます。

 次に、リンパ球の外形は、ほぼ円形からさまざまに変形しているのが通常で、したがって、「定型的な外形」が標本上では決められません。

 では、

 自問自答

 (2)なぜ細胞質の広さがこれほどに異なってくるのだろうか?

 私は、細胞質の広さは刺激に応答したリンパ球で広く、「サイトカイン等の他の産物の合成能力」の高いリンパ球と見ます。萎縮したリンパ球はその「機能したリンパ球の終末像」と見ます。

 

4−3)塩基好性の増強への疑問と説明

 普通染色標本では、細胞質の塩基好性が中リンパ球や大リンパ球では淡い澄みきった青空色から、大リンパ球ときには小リンパ球でも淡青色から濃青色まであります。

 また、中間型を含めて塩基好性の濃淡の程度は多様です。

 したがって、塩基好性においても定型的な色調と濃さの程度は決められないのです。従来から呼ばれてきた「異型リンパ球」は細胞質の塩基好性がかなり強いものを指します。

 では、

 自問自答

 (3)なぜ色調がこのように異なってくるのだろうか?

 私は、健常人のリンパ球について、塩基好性の強さは「活性の高まったリンパ球」と考えます。異型リンパ球がその典型です。

 

4−4)核の大きさ(または、クロマチン量)の増大への疑問と説明

 核の大きさは標本上では核の長径、短径の平均直径で表現できます。小型のリンパ球では7 〜8μmの核直径、中型で9 〜10μm、大型のリンパ球では約12μmです。ときには、異型リンパ球とされる、さらに大型(16μm以上)のものが出現します。

 核の成分である染色質(クロマチン)量は、細胞分裂周期でいう「静止期」の核ならば、リンパ球の大小や核の大小に関係なく2倍体(2N)で、全て等しいはずです。

 自問自答

 (4)なぜリンパ球は核の大きさとクロマチン量(ときには、粗大または繊細の様子)が異なってくるのだろうか?

 私は、細胞一般においては、核の大きさとクマチンの増量は比例関係が強いと考え、「核小体まで整って」いくならば「細胞分裂に至る」と考えます。

 しかし、ことが正常な成熟リンパ球の核ということになると、「クロマチンの部分的繊細化」が、結果として「サイトカインの産生で機能が終わる」だろうと考えます。

 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

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