リンパ球を追う(シリーズ300-B)

リンパ球の世界(3‐B)

 B.リンパ球をどうみるか

6.血液形態学の用語の問題点

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

 そこで、この辺りから少しややこしい表現がどうしても必要になってきます。これ以上にリンパ球に差異を求めて表現するときには、細胞生物学的な用語と論理とが必要です。

 また、従来の血液形態学用語では、光顕像所見の記述に電顕用語を用いないのが通例でした。リンパ球の形態表現は、いわゆる普通染色と光顕像での観察という前提で語られてきたのです。

 電顕像で論議する超微構造やその専門用語は、光顕像ではみえない(実際は、見ることができない)事実ですから、核膜、リボソームなどの超微形態用語は光顕像所見の対話中では用いないという暗黙の了解がありました。

 例えば、電顕像でいうゴルジ装置は、光顕像では核周明庭という用語です。光顕像だけで済ませられた時代と場面にはこうしたゴルジ装置などの用語が不必要でしたが、今や分子血液学として語られる時代には表現に必要な言葉がついていけないのでは、表現の定義あるいは情報伝達に不都合が生じるという問題点は当然でしょう。

 そこで、読者には本稿の記述や表現で1つの約束を受け入れていただくことになります 。その約束とは電顕像用語や、細胞生物学的な用語の使用を許していただきたいのです。というのは、光顕像でみえるという意味ではなく、「みえてくる(理解としての)変化」の背景を考察して解釈し、伝達して、論議するために必要だからです。

 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

  (頒布いたします)

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