中竹俊彦 III-B.リンパ球をどうみるか(2007)-9.リンパ球サブクラス(リンパ球の質的な違い)‐1)サブクラスと性質 2)サブクラスごとの移動 3)サブクラスごとの働き 4)サブクラスの細胞内変化

リンパ球の世界(III‐B)

 B.リンパ球をどうみるか

9.リンパ球サブクラス(リンパ球の質的な違い

                          杏林大学 保健学部 臨床血液学 中竹 俊彦

9−1)リンパ球の特性その1:サブクラスと性質

 末梢血リンパ球の特性は、リンパ球サブクラスがあることから明らかなように、個々に性質が異なっています。

 刺激に対する反応性もまた、個々に異なる細胞集団です。リンパ球が受ける刺激の多くは、リンパ球側に準備された特異的なレセプターで選択され、感受性によって受容されます。

 次にリンパ球の活動では、リンパ球自体がDNAとRNAを合成すれば細胞分裂至り、RNA合成(mRNA)だけならばサイトカイン産生だけと考えられます。

 

9−2)特性その2:サブクラスごとの移動 

 活性化の間に形態変化、血中の滞在時間の短縮、組織側への出口の場所への付着性(出口の違い)およびサブクラスごとの移動などが起こると理解できます。そして移動先で定着した個々のリンパ球は、塩基好性の増した細胞質で個々に異なった産物(サイトカイン類)を合成し、分泌するでしょう。

 

9−3)特性その3:サブクラスごとの働き

 やがて、サブクラスごとの働きは、細胞質から「分泌される成分の違い」で結果が免疫機能の促進か、機能抑制に反映され、個々の反応経緯(いきさつ)が全く異なります。これらの全域が反応性変化であり、「活性化とは何か」という概念で理解されているものと考えられます。

 

9−4)サブクラスの細胞内変化

 リンパ球はサブクラスごとに刺激に対応する細胞内伝達機構をもち、核(DNA)へ伝達します。核膜を経て核の遺伝子のどこへ特異的に刺激が伝わったのかによって、サブクラスごとに特定の遺伝子の活性化によって指令された成分を合成し分泌します。

 この間の普通染色標本での形態変化変が連続的、かつ微妙で、みえる変化が少ないのです。また、塗抹標本では産物とその働きが全くみえません。表現を言い換えると、形態学的には「隠れた特性」であり、普通染色標本では顕微鏡的にみえてこないのです。

 このような特性のために、リンパ球の形態と機能の関係、あるいは多様性が時間の経過とともに次第に「微妙な形態変化」になっていきます。変化の理由が分かりにくい変化自体に説明もつけにくい、結局は私たちが読み取れないのです。

 私たちが行う形態学では、リンパ球が分子のレベルでは機能が全く異なる、多様な機能を保持する細胞群であることを認識しているつもりですが、性質が異なる細胞を無理に一括してリンパ球と呼んでいることになるのです。

 これが「リンパ球」という呼び名に「集約された細胞群」である、という認識が現時点で改めて必要でしょう。

 体裁

 B5版(本文 305頁)

 目次(序論・1〜24まで9頁)

 索引(欧文A〜Z 2頁、和文索引19頁 合計21頁)

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