当院において発生したガーゼ遺残事故と再発防止について
作成日時:2024年10月07日
杏林大学医学部付属病院
病院長 近藤晴彦
当院において、手術を行った際に使用したガーゼを体内に遺残する医療事故が発生しました。このことに対して、当院ではガーゼの摘出を行った上で、再発防止策を取りまとめました。患者さんご本人やご家族のご了解が得られましたので、プライバシーに配慮し、事故の経緯を以下に記します。ご本人やご家族に多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げますと共に、今回の事故を重く受け止め、全職員一丸となって医療の安全確保に万全を尽くす所存でございます。
<経緯>
令和5年8月に腹部の手術を行った患者さんに対し、術後6か月目の経過観察として、今年3月にCT検査を実施したところ、腹部に異物が残っている所見がありました。手術で使用したガーゼ(小タオル)の遺残が強く疑われたため、患者さんとご家族に説明を行い、6月に摘出手術を実施しました。その結果、摘出した異物はガーゼであることが判明しました。その後、患者さんは順調に回復されています。患者さんとご家族には事実経過を詳しくご説明し、謝罪をいたしました。また、第三者機関である日本医療機能評価機構にも報告いたしました。
当院では手術におけるガーゼ等の体内遺残を防ぐため、手術の前、皮膚を縫合する前、手術の終了後などに繰り返しガーゼの種類と枚数を確認し、電子カルテと掲示ボードに記録するほか、術後にⅩ線撮影を実施して遺残の有無を確認する手順を定めていました。しかしながら、今回の手術ではこれらの手順が十分に遵守されず、Ⅹ線画像の読影も正確さを欠いていたことから、結果としてガーゼの遺残が発生しました。
<再発防止策>
今回の事故を踏まえ、医療安全推進室を中心に再発防止策を取りまとめ、以下の手順を遵守するよう各診療科、及び手術部・関連部署に周知・徹底を行いました。
・ガーゼ等のカウントは、手術の開始前、閉創を始める前、皮膚を縫合する前、手術の終了後に、メンバー全員で一旦手を止めて確実に行い、その内容を電子カルテのカウント欄に入力する。
・体内にガーゼ等を挿入する際は、医師が種類と枚数を看護師に伝え、看護師は掲示ボードに内容を記載する。
・複数のガーゼを体内に入れる場合は、端をペアンで把持し、ペアンを体外に出して使用する。
・手術終了後、全てのガーゼ等をカウント架台にかけ、準備した枚数と一致していることを確認する。
・X線画像の読影は複数の医師で行い、「ガーゼ遺残があるのではないか」という視点で確認を行う。
改めて、患者さんとご家族に心よりお詫びを申し上げますと共に、このような事故が二度と起きないよう再発防止策の徹底を図り、事故の未然防止に努めてまいります。