病院・診療科についてクラミジア感染症と言われたら?
クラミジア感染症とは?

クラミジアには、よく効く抗生物質があります。ただ、細胞壁を持たないので、ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系などの通常の抗生物質は効きません。他の病気でもらった抗生物質を代用するのは止めましょう。また、先進国では性感染症の原因として有名ですが、発展途上国ではトラコーマを引き起こし、これは失明につながります。クラミジアには治療薬があるため、「予防できる失明」の第一位とも言われています。 気付かないでいると、母子感染を起こし、赤ちゃんで結膜炎や肺炎を起こす怖い病気でもあります。
原因と症状について
クラミジア感染症は、性行為による感染等の粘膜レベルでの接触や分泌液を介して感染します。そのため、プールや温泉で感染する心配はありません。女性では、感染者との性交渉後1~3週間で、帯下(おりもの)が少し増える子宮頸管炎を発症します。さらにその菌がおなかの中に入り、卵巣や卵管の周りに癒着を起こすことがあります。しかし、症状の自覚がない方が半数以上います。この病気が蔓延する原因は、感染しても無症状の人は、治療しないまま次の感染源になることや、感染力が強いことがあげられます。感染者との1回の性交渉で淋病では約30%、クラミジアでは50%以上において感染すると言われています。また、性行動が多様化して、男女とも咽頭(のど)感染も増加してきています。子宮頸管からクラミジアが見つかった場合、無症状であっても咽頭からクラミジアが検出される割合は10-20%と報告されています。
男性では、クラミジア尿道炎として発症します。感染した1~3週間後に比較的サラッとした尿道分泌物(うみ)や排尿時の軽い痛みが出現します。男性も症状がないことが多く、20 歳代で全く無症状の男性に尿の検査を行うと、なんと4~5%でクラミジアが発見されたという報告もあります。
検査方法について
子宮頸管からの分泌物や尿道からの分泌物を綿棒のようなものでこすって検査するのが正確ですが、特に男性では尿道に綿棒を挿入するのは痛みを伴うため、最近は尿で代用することも多いです。淋菌感染症と一緒に感染していることも多いため、淋菌とクラミジアの同時検出キットが普及しています。
治療方法について
抗生物質を服用することが必要で、医療機関に行かないと処方されません。具体的には、①ジスロマック(250mg)4錠を1回で または、② ジスロマックSR成人用ドライシロップ2gを1回で または、③クラビット(500mg)1錠を1日1回7日間で または、④クラリスまたはクラリシッド(200mg)1錠を1日2回7日間で服用します。ジスロマックは、錠剤とシロップともに1回で済むので好まれますが、下痢の副作用があります。下痢を避けたい場合には、クラビットなど他の抗生物質を服用します。妊娠している場合は、クラリスまたはクラリシッドよりも奇形のリスクが低いため、ジスロマックを服用します。
予防について
パートナーの感染がわかったときは、たとえ無症状でも医療施設を受診し、ペアで治療することが必要です。男性は泌尿器科、女性は産婦人科を受診します。そして、治療後には、クラミジアが陰性になっていることを確認する必要があります。
また、クラミジアは特効薬で殺すことができますが、一度できた癒着を元に戻すことはできません。
性行為で感染するため、性行為(オーラル含む)を行う際にはコンドームを正しく着用し、不特定多数との性行為は感染症リスクが高くなるため避けましょう。
クラミジア感染症と不妊症の関係
女性の場合感染すると、子宮頸管から卵管まで侵入し、卵管炎を起こす可能性があることがあります。その影響で卵管が詰まったり、周辺組織に癒着が発生して不妊の原因にもなります。 また、母子感染で赤ちゃんへ感染する可能性があり、早期発見早期治療が必要です。
杏林大学医学部付属病院 泌尿器科 診療科長/教授 福原 浩