病院・診療科について腰が痛いと感じたら

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 40 歳になって腰痛で外科医を辞めた友人がいる。30代後半から慢性の腰痛に悩まされ、コルセットを着けていても手術中に痛みで手をおろすことが多くなり一線から退かざるを得なかった。さらに長時間の車の運転や診療で長く座っていることも辛くなり、整形で診てもらったがX線写真に大した異常はなく、リハビリに努めなさいと言われたそうである。
 外科医に限らず、看護師や理学療法士など立ち仕事をする人には慢性腰痛が多い。腰痛というと椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、腰椎すべり症、脊柱管狭窄といった整形外科治療の対象を思い浮かべるかもしれないが、しびれや麻痺が起こらない限り、手術になることは少ない。だからといって薬で完治するわけでもないし、慢性化してからではリハビリも奏功しない。大切なのは「腰が重い、痛い」と感じたら、そのままにしないで対策を講 じることである。
 対策で重要なのが姿勢である。慢性腰痛者には骨盤前傾あるいは腰椎前弯と表現するが、腹を前に突き出した、いわゆる出尻姿勢がみられることが多い。これを正すのは意外に簡単で、膝を曲げることに努めればよい。寝るときは横向き( 側臥位) で膝を曲げるか、 仰向けでも膝裏に枕を入れたりすれば膝は曲げられる。座っている姿勢でも足台を置いて足を載せるなどして膝を抱え込み気味にするといい。立っているときには少なくとも一方の足を台に載せれば片膝は曲げられる。

 腰痛体操も効果がある。前かがみで物を持ち上げるとテコの逆原理で背骨には物の重さの10 倍近くの負荷がかかる。これを和らげるのが腹筋と背筋である。体操ではとくに腹筋強化がポイントとなる。仰向けで膝を曲げて臍をみようとするだけでも腹筋や腸腰筋は鍛えることができる。もちろん、上半身を起こすことができれば効果は倍増する。筋トレだけでなく、膝を抱え込んで背筋をストレッチすることも効果的である。いずれにしても体操は継続が大切なので、腰痛を経験した人には軽快したあとも習慣として続けられたい。

(岡島 康友:杏林大学医学部付属病院 リハビリテーション室 教授)

杏林大学新聞第14号より抜粋