病院・診療科について貧血の話

 貧血という言葉をよく耳にしますが、これはどのような状態なのでしょうか?
 教科書では「末梢血液中のヘモグロビン、赤血球数が低下した状態」と定義されていますが、健康診断を含め、一般的にはヘモグロビンの数値で貧血の有無を判定します。
 赤血球は血液の赤い色のもととなっている血球(細胞)ですが、その中にあるヘモグロビンが酸素を体中の組織へ運んでいます。このため、赤血球、すなわちヘモグロビンが少なくなると、体に酸素がうまく運べなくなくなり、息切れ、動悸、疲れやすいなどの症状が出てきます。
 ただし、体には順応性があるので、徐々に貧血が進行した場合は、自覚症状が全くないことも珍しくありません。
どうして貧血は起こるのか
 一つには、生産不足があげられます。赤血球は骨髄という場所で作られますが、その材料(特に鉄)が不足している、または骨髄自体に病気がある、などの理由で赤血球がうまく作れないことがあります。
 また、出血(主に生理)により赤血球が失われることも原因となります。多少の出血があっても、骨髄が産生を増加し補うため、当初は貧血にはなりませんが、出血が長引いたり大量であったりすると、結局は材料である鉄が不足し、貧血が出現してきます。
鉄分の不足とその他の原因
 健康診断での貧血はほとんどが女性で、生理の出血に鉄分の摂取不足が重なる「鉄欠乏性貧血」です。この場合は、鉄剤を内服すれば1~ 3 か月で貧血は改善します。自覚症状がない場合でも、貧血が改善すると楽になったと感じることがよくあります。
 「鉄欠乏性貧血」は、血液検査で診断できますが、背景に病的な出血が隠れていないか確認することが重要です。生理の他にも、子宮筋腫などの婦人科疾患、胃(胃潰瘍・胃がん)や大腸(大腸がん・腸の炎症・痔)など消化管からの出血も貧血の原因となります。男性の貧血は年齢に関係なく、また女性でも年齢に応じて、こうした病気がないか、追加で検査を受けることをお勧めします。

(岡本 晋:杏林大学医学部付属病院 人間ドック 教授)
杏林大学新聞 第22号より抜粋