健康ひとくちメモ公衆衛生からみたタバコと健康

 日本でのタバコ由来の死亡者数は推計12万人と生活習慣等由来の成人死亡約96万人の中で最も多くなっています。
(Ikeda N, et al: PLoS Med. 2012: 9(1):e1001160.)。

多くの病気の原因や引き金に

 2016年に厚生労働省が公表した『タバコ白書(喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書)』では、科学的知見によりタバコとの関係が指摘される喫煙者の疾患に、悪性腫瘍(肺がん、上気道がん、胃がん、膵臓がん等)、循環器疾患(心筋梗塞、脳卒中、末梢動脈硬化症等)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)等のほか、Ⅱ型糖尿病、歯周病やニコチン依存症等があるとされています。
     

“ 百害あって一利なし”

 タバコには周囲の非喫煙者が副流煙や呼出煙を吸い込む受動喫煙の問題もあります。副流煙の有害物質の濃度は主流煙より高く、受動喫煙者も喫煙者と同様の健康被害が生じる危険性が示唆されています。乳幼児の場合では乳幼児突然死症候群、気管支炎や気管支喘息、虫歯等の発症、妊婦では低出生体重児の出産の危険性も示唆されています。
 公衆衛生の視点から言えば、タバコは喫煙者自身だけでなく家族にとっても“百害あって一利なし”といって過言でなく、タバコは健康被害をもたらす嗜好品の代表格といえるでしょう。喫煙者の方には、是非とも禁煙に取り組んでいただきたいと思います。

専門医がサポートする禁煙外来


タバコに含まれるニコチンは依存性があるため、個人努力での禁煙は難しいかもしれません。その場合は、禁煙外来を受診して専門医のサポートを受けながら禁煙に取り組まれることをお勧めします。
杏林大学病院でも禁煙外来を開設しています。詳細は[こちら]をご覧ください。

2022年4月

保健学部准教授、日本医師会認定産業医、健康スポーツ医 岡本 博照

(※杏林大学新聞第27号より抜粋)