健康ひとくちメモ食中毒の原因と発症しやすい環境

食中毒とは?

 食中毒は、「有害な微生物や化学物質を含む飲食物を食べた結果生じる健康障害のこと」と定義されています。多くは、急性の胃腸障害(嘔吐、腹痛、下痢などの症状)や発熱、頭痛を引き起こします。
 食中毒を引き起こす主な原因は、「細菌」と「ウイルス」です。このほか毒キノコやフグなどの 「自然毒」、サバやイカに寄生するアニサキスなどの「寄生虫」なども原因となります。

代表的な食中毒の原因物質と症状、発症までの目安

 下表は例示であり個人差(当日の体調や年齢)や原因物質の種類や量により当てはまらない場合もあります。発症するまでの期間が長いものは特に注意が必要です。

原因物質主な原因食品主な症状発症までの目安
アニサキス 鮮魚介類(刺身、寿司) 激しい腹痛、吐き気、嘔吐 胃アニサキス症は8時間以内、腸アニサキス症は数時間から十数時間以内
カンピロバクター 生や加熱不十分な鶏肉(鶏さし、鶏たたき) 下痢、腹痛、発熱(38度以下)、倦怠感、筋肉痛 2~5日(平均2~3日)
黄色ブドウ球菌 あらゆる食品、生や加熱不十分な二枚貝 吐き気、嘔吐、腹痛、下痢 平均1~2日
ノロウイルス 煮込み料理(カレー、シチュー、煮物) 腹痛、下痢 6~18時間(平均10時間)
ウエルシュ菌 あらゆる食品 吐き気、嘔吐 1~5時間(平均3時間)
腸管出血性大腸菌 生や加熱不十分な食肉(ユッケ、牛さしなど) はげしい腹痛、血性下痢 1~14日(多くは3~5日)

食中毒から身を守る原則

  1. つけない:食品、食器類、容器、手指などに菌やウイルスを付着させない
  2. 増やさない:調理後は適切な温度で保管して菌やウイルスを増殖させない
  3. やっつける:加熱、香辛料、酢、アルコール等で除菌する

 近年では一年を通じて食中毒対策が必要不可欠となってきました。食中毒は簡単な予防方法をきちんと守れば予防できます。もし、お腹が痛くなったり、下痢をしたり、気持ちが悪くなった場合は、医療機関を受診しましょう。


2025年7月
医学部付属杉並病院 栄養部副部長  佐々木裕子  
(※杏林大学新聞第34号より抜粋)