消化器内科久松教授が難病の炎症性腸疾患 厚生労働省の研究代表者(令和5-7年度)に就任

作成日時:2023年04月01日

 2023年4月から当院消化器内科 久松理一教授が、令和5-7年度 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業の「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班」の代表者に就任しました。令和2-4年度に引き続き2期目の就任になります。
 クローン病と潰瘍性大腸炎に分類される炎症性腸疾患(IBD)は、日本では難病に指定されています。最新の統計では全国で、クローン病患者数は約7万人、潰瘍性大腸炎患者数は約22万人と推定されています。もともとは欧米、特に白人に多いとされてきた疾患ですが、近年はアジア、アフリカでも増加し、日本でも増加傾向が続いています。
 潰瘍性大腸炎の患者数は、日本の指定難病の中では最多で、世界でも米国についで第2位の患者数です。症状はクローン病では下痢や腹痛の他に、発熱、体重減少、難治性痔瘻などを認め、腸管の狭窄などによる手術例も少なくありません。潰瘍性大腸炎では下痢や血便を伴い、難治性や重症の場合は、手術で全大腸を摘出することが必要になることもあります。
 両疾患とも20−30歳代に発症者が多く、慢性の経過をたどるため、就学、就労、結婚、妊娠といったライフイベントに大きな影響を与えます。特定の原因は不明ですが、遺伝学的素因や食事・衛生状況などの環境因子が複合的に関与し、腸管の免疫状態のバランスが崩れることによって発症すると考えられており、近年では腸内細菌叢との関係が注目されています。
 近年、炎症性腸疾患の治療の進歩はめざましく、薬物療法の主役は分子標的治療薬に変わりつつあります。新薬が次々に登場し、さらに多くの国際共同治験が進行中です。詳細は当院の【炎症性腸疾患包括医療センターホームページ】をご覧ください。

 この炎症性腸疾患の病態解明、新規治療法の確立、診療の均てん化、患者さんのQOL改善に向けた啓発活動などに関してわが国全体の司令塔の役割を果たしているのが、「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(通称IBD班)」です。

 研究班代表者に就任した久松教授のご挨拶を紹介します。


 この度、令和2-4年度に引き続き令和5-7年度の同研究班の研究代表者を務めさせていただくことになりました。
 1期目はIBD班もコロナ対応に追われた3年間でしたが、そのような状況下でもオールジャパン体制で多くの成果を上げることができました。令和5年度からはさらに力を合わせて、わが国のIBD診療の質向上と患者さんのQOL改善のために、引き続き取り組んでいきたいと思います。
 また、杏林大学医学部付属病院でも多くの診療科の協力を得て炎症性腸疾患包括医療センター(Interdisciplinary Center for Inflammatory Bowel Disease; ICIBD)を開設しています。すでに1,000名を超える患者さんの診療にあたっており、国際共同治験や多施設共同研究でも実績をあげています。地域のそして日本の基幹病院として頑張っていきたいと思いますので、ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
 
 

杏林大学医学部付属病院 
消化器内科 教授 久松理一