大学ホーム外国語学部一般の方論文・翻訳コンテスト第2回論文部門講評

論文・翻訳コンテスト

論文部門講評

外国語学部教授 稲垣 大輔

論文部門は、金田一秀穂教授はじめ、各課題に2名ずつ、総勢8名で、まず一次審査を行い、各課題から数点優れた作品を選出しました。「日本語力」「文章力」「論文構成力」「説得力」「調査力」「オリジナリティ」などの要素を共通の選出基準としました。二次審査は、審査委員8名全員が、一次審査で選出した全作品を読み直し、全員一致となるまで協議した結果、優秀賞1作品、奨励賞3作品を選びました。

優秀賞に選ばれた和光真理江さんの作品は、「私の『使える英語』」と題して、真の英語力とは何かを論じたものです。和光さんの「使える英語」観には、英語が話せず・聞けなかった幼少の2年間と、英語を正確に読み・書く必要性に気づかされた高校1年間の、貴重な海外体験が活かされています。話し、聞く、音声によるコミュニケーション能力と、読み、書く、文字によるコミュニケーション能力の両方が必要であることを主張する、語学学習の本質に迫る説得力のある論でした。「『話し・聞く』から『読み・書く』へ」という、自然なことばの習得過程を、母語である日本語だけでなく、外国語である英語でも体験した和光さんの語学学習法は、日本人の英語学習に対する示唆に富むものです。「使える英会話」と「受験英語」、言い換えれば「音声重視」と「文字重視」の、いずれか一方を偏重せず、バランスよく学ばねば『使える英語』にならないという主張に、審査員一同、共感しました。

奨励賞に選ばれた3作品も、各課題の中では最も優れたものでした。松尾ひかるさんの「真の観光資源の維持について」は、自然と文化遺産を保つことと、心の観光資源を高めることが大切であるという2点に論点を絞り込み、論旨明晰で素晴らしいものでした。沖縄という観光資源に富んだまちで暮らす人々を代表して、郷土を愛する気持ちをいかんなく表現しているところが評価されました。ただ、文末が「です・ます」調になっていますが、論文では「だ・である」調で書いていただければもっと良かったと思います。

石岡奈未可さんの「世界に広がる熱い力」は文章力に優れた作品です。特に、冒頭部分は、ねぶたの臨場感を見事に表現し、読者を引き込む筆力があります。後半部分を、課題が意図した「世界に誇れる」という部分に焦点を当て、論を展開してくれればさらに素晴らしい作品に仕上がったのではと感じました。

高尾明日香さんの作品は、日本語は、ひらがな、漢字、カタカナの三種の文字を使う点が不思議であり、魅力でもあると論じました。柔らかく優しいひらがな、堅く難しい印象を受ける漢字、外来語独特の印象を受けるカタカナ、これら三種の文字を使う日本語は、強国にのみこまれず、うまく融合し適応する日本の歴史を反映するものであると。普段何気なく使っている三種の文字に、不思議さを発見し、疑問を抱くという姿勢は、あらゆる学問、探求にもつながる重要な視点です。ただ、疑問・問題が見つかったら、自分で調べたり、具体例を探してみたら、もっと興味深い論文になっていたのではと思います。

いずれにせよ、入賞した4作品は高校生が書く論文としては秀逸であり、私たち審査員は、若い新鮮な感性に触れることができ、論文コンテストを開催してよかったと思いました。

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