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真の観光資源の維持について 松尾ひかる

沖縄県は観光産業に力を入れ、年々観光客数の増加を図っています。しかし、人の数には限界というものがあり、いつも初めての観光客だけでは増加は見込めません。従ってリピーターをいかに増やしていくかが大きな課題となっているのではないでしょうか。その為には、何時、訪れても「楽しい」「気持ちいい」「また訪れたい」と感じて貰えるような観光地にしなければならないと考えるのです。それには各地域にある観光資源をその地域の人々が中心となって大切に保っていかなければならないのでしょうか。では、観光資源とはいったい何なのでしょうか。私は、観光資源の意味を的確に捉えるために、「観光」と「資源」について辞書をひいてみました。「観光」とは「よその土地の風景や名所・旧跡などを見てまわること」とあり、「資源」とは「生産活動のもとになる物質で自然界に存在するもの」とありました。そのまま理解するとするならば、自然界の物質に何も手をつけずにおけば観光資源といえますが、私はそうではないと考えるのです。なぜならば、観光資源とは自然や歴史的遺産をはじめとして、他県にない諸々の雰囲気を味わうために観光に訪れる人々に対して接する人間、すなわち人的資源も含めて言えることと考えているからです。ですから、私は観光資源について、次の二点を述べます。

(1)他県では味わえない自然と独特の文化遺産を美しい状態で保つ。 沖縄県は日本でも最南端の離島であり、そこには、熱帯特有の自然を満喫することができます。降りそそぐ太陽の光を浴び、コバルトブルーに輝く海の中で色とりどりの花を咲かせる珊瑚や、そこに集まり海中で泳ぎ回る熱帯魚の数々。そして、陸上では椰子の木や蘇鉄、アダンといったような熱帯植物を真っ青な空の下で散策できます。また、文化遺産では、歌や踊りのような無形文化財と建築物等のような有形文化財があります。前者は地方の言語を大切に保って継承させていかねばなりません。後者の一例として城の造りは、中国文化の流れを漂わせる独特の建築様式を感じさせ、築城様式も本土の城のように周りを堀で囲い、天守閣を備えた城ではなく、石造建築技術を駆使した造りになっています。そのような文化遺産は、首里城周辺のみだけでなく、南部にも知念城跡や玉城城跡や大里城跡にも見ることができます。しかし、これらの城跡を含め、青い海や空も開発という名の下に危機的状況におかれています。これらの遺産は一度破壊してしまうと、元に戻るまでには、何万年という歳月が必要とされてしまうのです。また、文化遺産は再現しても形は残るでしょうが、もはや遺産ではありません。そうさせないためにも、私たち一人ひとりが出来る小さな力と協力で地域の遺産を守っていかねばならないと痛感しています。

(2)守禮の邦の伝承を受け継ぎ、心の観光資源をより高める。 本県は琉球王国の時代より、「守禮之邦」として礼儀を重んじ、訪れる人々に対して心のこもった対応で名が知られていました。しかし、現在ではその面影とは反対に観光客に対して、悪い印象を与えてしまう一部の県民がいることは否定できません。一例として、たばこやチリの投げ捨て等に見られる観光地や市街地の乱雑や公共交通機関乗務員の接遇マナーの悪さなどがあります。シンガポールのように全てを罰金制で国を美しく保つ方法もありますが、罰則で美しさを保つのではなく、県民自らの意識で保たなくては、真の資源といえないと考えます。

私は、まだ高校生なので社会の前面にたって多くの人々を指導することはできません。しかし、私たち自身にできること、それは、住んでいる地域の環境を保つための早朝掃除やボランティア活動を含め、日頃より他人に対して思いやりのある心で接する習慣を身につけることだと信じています。本当に微々たる力ではありますが、一人でも多くの人に意識の高揚が染み渡って、いつか県全体で各地域の観光資源を大切にし、発展させていくことを願っています。その心が私のまちの観光資源であると考えています。

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