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私の見つけた日本語の不思議 高尾明日香

日本語は不思議である。そんなことを初めて思ったのは学校で英語のスピーチを書いていた時だった。書きたい内容をしっかり決め、あとは英語で書けば終わりという段階に来たにもかかわらず、なかなかしっくりくる文章が書けず困ってしまった。ここは少し弱めの表現で言いたいと思ったのに、実際英文を見ると断定的な言い方に見えたり、目立たせようと思った部分があまり他の部分と変わらない感じになってしまったりと、自分が考えるニュアンスと微妙に違うものになってしまった。日本語を使っている時には表現できるものが英語では難しい。もちろん私の単語力不足とか文法力がないというのも関係しているとは思う。しかし一番の理由は、英語の文字はアルファベットのみであるのに対し、日本語はひらがな、漢字、カタカナの三種類で表現できるということではないかと私は思う。大した違いではないようにも思えるが、この三種類があることで私達は実に多くのことを表現し、伝えることができる。

例えば、この三種類の文字を見た時に無意識に感じるものがある。カタカナを見たならこれは西洋の言葉を取り入れたものかなと思うだろう。英語の音をそのままカタカナに当てはめたものは多い。他にも作者がわざと目立たせるためにカタカナを使うとか、外国人が片言で話している様子を表すとか色々応用して使われている。カタカナは三つの文字の中で一番独特な意味を表せるものかもしれない。では漢字を見たならどう思うか。たいていの人はあまりにも多く漢字があると一瞬ひるんでしまうと思う。理屈っぽい難しい文章なのではないかという印象を与えるからだ。漢字は三つの文字の中で最も厄介だ。自分で覚えていかないと中々知識が増やせない。だからこそ堅い印象が強い。だが漢字は他の文字と違い、一文字だけでも意味を持つという特徴がある。一度覚えた漢字がよく分からない熟語になっていても何となくプラスイメージかマイナスかなど予想ができる。実は漢字から得られる情報はとても多いのだ。最後にひらがなであるが、これはやはり柔らかい優しい印象をうけると思う。基本となる文字であるためか皆が滑らかに読めるような雰囲気で、他の文字と文字をつなぐという大事な役割もある。ただあまりにひらがなが多いとなると読む人に幼い印象を与えることもあるようだ。しかし、ひらがながなければ日本語は文章にならない訳で、要となる文字であると私は思う。

このように三つの文字の特徴を考えてみると、それぞれが読み手に与える印象は違ったものである。日本語はこの三種類をうまく組み合わせて読み手に内容だけでなく、書き手の人柄や心情、又は登場人物の設定なども同時に伝えることができる。こんなことができる言葉は他にないのではないか。多くの国の言語は英語のように一つの文字で作られているものが多い。もちろん一つの文字を記号的に組み合わせていけばよいという簡潔さは分かりやすく使いやすい。だからこそ世界中で広まり国際的な公用語になったのだろう。この点においては日本語はかなわない。日本語はやはり難しくそして面倒なのである。しかしその難しさを乗り越えても日本語は使う価値がある。最も正確にうまく色んな情報を含んで伝えることのできるとても優れた唯一の言葉だからだ。

ところで、どうして日本には三つの文字があるのだろうか。私は詳しく知っている訳ではないので推測になるけれど、アジアからの要素とヨーロッパからの要素を取り入れ独自の文化としたためではないだろうか。漢字は昔文化の中心であった中国から持ちかえり、カタカナは西洋が進出してきた時にうまく表せるようにうまれた。しかしこうした中で私がすごいと思うのは他の国の言語に日本がのみこまれなかったことだ。今世界の国をみても日常語が植民地政策をうけた国のもので、自国のではないことが多く、外国の文字をそのまま受け入れている。日本語は違う。確かに他の国の文字に影響を受けたが、自分達の文字の仮名を消すことはなかった。むしろ外国の文字を変形し自分達の使いやすいようにして日本語という文化を作り上げたのだ。こうしてひらがな、漢字、カタカナという三文字がうまれ、文字を作った人々の予想以上に優れた働きを持った。

日本語は外国語と比べると本当に不思議である。一つの言葉に三種類の文字とは普通ではない。しかしこの中には強国にのまれず、うまく融合し適応してきたという歴史や、細かく正確に気持ちを伝えられるという利点が含まれている。私は日本人として生まれ、この言葉を扱えることを誇りに思う。そしてこれから先も日本語がたくさんのものを含んで成長し、続いていくことを願いたいと思う。

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